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2012年2月11日 (土)

<DVD>不思議の国の二人のアリス【激団しろっとそん】

昨年の火ゲキで行われた作品。
諸事情あって、この公演が行われたバージョンとオリジナルキャスト版というDVDが存在します。
まだ観ていないオリジナルキャスト版だけ観るつもりだったのですが、色々と考えるところがあって、ついでに公演バージョンも観てみました。

来週に本公演がある劇団です。
わざわざ、そんな時期に何でDVDをといったところですが、ファンならば、何となくこの作品を観ておこうかという気になるのは理解いただけると思います。そう、この作品じゃないといけないのです。
本公演終わってから、懐かしんで観るのが筋ですが、あえてその前に観ておくというのも通かなと思って。

あらすじは過去記事を参照。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2011/01/3030110118-1a66.html

久しぶりに拝見して、まずこんなに小ネタを散りばめていたのかとか、30分という短い公演だったこともあるのか、こんなにテンポ良かったかなとか、お得意のちょっとぐだぐだが入ってないじゃないかとか、色々と思うところが。

バージョンによって、友達のアリスに妬みを持つもう一人のアリスが異なります。
公演版は大牧ぽるんさんで、DVDのオリジナル版がぼんてんべすさん。
両者ともに、友達に妬みを持って悪く振る舞うが、本当はどこかで友達のことを心配している。だからこそ最後は素直になれて、二人のアリスが鏡像のように相反する姿ではなく、互いを思い合う本当の友達となる。
このベースは両バージョンで変わっていないのだが、やはり役者さんの個性なのか、役作りのちょっとした違いで全体的な雰囲気がかなり変わって感じた。

公演を拝見した時の感想に書いたように、公演版のアリスは非常に可愛げがない。
友達への妬みが露骨に表面に出ており、どこか友達のアリスに対する態度も上から目線を感じる。
隠れた友達を思う心が出てくるところも、どちらかというと友達を思う感じよりも、姉が出来の悪い妹を思うような印象を受ける。
恐らく、その比較からか、もう一人のみつもりさん演じるアリスがとても純粋無垢でかわいらしく見える。こんないい子に悪気があるわけないだろう、こんな子を妬むなんてねじ曲がっているよ、優しく見守ってあげろよというように、善のアリスと悪のアリス、大人のアリスと子供のアリスのような極端な観方になる。

オリジナル版ではこの悪さ加減があまり感じられない。
これは、非常に意外で、ぼんてんべすさんのイメージが嫉妬のような悪い表情がとてもうまいように思っていたので、よりこのあたりが強調されるように考えていました。
公演版も観直したのは、これが理由で、久しぶりに観たので、感覚がおかしくなっているのかなと思って、再確認してみました。
やはり観直してもこの印象は変わらず、少なくとも私にはこう感じたのは間違いないようです。
オリジナル版は妬みの感じが、友達のケンカのようで、まあガキのケンカが仲直りしましたみたいに感じられます。
その分、あんまりもう一人のアリスがかわいく見えない。純粋ゆえにわがまま、周囲に気を使わないみたいなところが強調され、何かどっちもどっちだな、結局似た者同士じゃんみたいな印象を受けます。

どっちが良いとかはありませんが、二人が分かり合うという結末のリアリティーはよりオリジナル版の方に感じます。
ちょっとしたスレ違いが、こんな不思議ワールドに二人とも連れて行かれ、そこで苦難を経験したので互いの気持ちに素直になれる。何となく、あり得る印象を受けるのです。これに対して、公演版は、そのスレ違いがけっこう奥深く、本当にこんなことで、また分かり合えるかなあと真面目に捉えるとそう感じてしまうところがあります。
難しいところで、設定がこんなファンタジーワールドで虚構の世界だからこそ、全部が全部、理詰くめではない虚構での統一が心地よかったり、やっぱりどこかで現実的にあり得る展開を求めてみたりと、客側に許される好き放題なわがままなところでしょう。

この作品、私の中ではかなり好きな作品で、おそらく劇団として代表的な作品、ユメリアよりも格段と好きです。
ここ最近、拝見した中で印象に強く残っている作品で超人予備校のほとんど人参という作品があるのですが、それに通じる物を感じるのです。あちらがちょっと大人感覚であるのに対し、こちらはやはりちょっと若さが残る単純なところがあります。そこが、また、若いからこその計算の無い素直な気持ちを感じさせられ、とても微笑ましい気持ちになるのです。

上述していない役者さんでは、もう退団されたりねさんは、両バージョンとも相変わらずの貫録ある演技でした。女王役ですが、まさにそのイメージでしょう。結局、一度もお話することが出来ませんでしたが、いつかその貫録ある姿で会話をさせてもらいたいものです。
くろさんは公演版で非常にしっかりした印象を受けましたが、それもそのはず。公演では不慮の事態により、一人役者さんが欠けているので、本来オリジナルでは二人でやる部分とかを一人でやっているのです。いつも以上にしっかりした立場で舞台に立たないといけなかったのでしょう。このあたりが、当時の感想でもきちんと感じ取れており、その気合をしっかり漂わせていたことが分かります。こうして考えると、かなりきわきわの状態での公演だったのだなとあらためて思いますね。
しろさんは、どうも違和感がある。これは彼女に鎌を下ろすとき、カメハウスの客演イメージが強くなり過ぎて、制服じゃないとおかしい感じになっています。ミニスカ、ちょっとヤンキー風イメージがもう消えなくなっています。それだけはまっていたということなのだとは思いますが。あの当時ははまってるなあと思った理性的な時計ウサギが、何をそんなかぶりものしとんねんといった感じですね。

最後にこのDVDを観た理由は、公演版では出演されていないアリス役のぼんてんべすさんです。
お分かりの方は、まあそうだろうなと思っていただけるでしょう。
どんな役者さんだったのかを少しだけでも理解して、来週の公演を拝見しておきたかったのです。
劇団のTwitter、ブログで素晴らしい役者さんであり、これからもまだまだ舞台に立って欲しいなんて言葉を頻繁に見かけます。
私は素人なので、いい役者、悪い役者の区別はよく分かりません。
せいぜい、はまり役の印象がとてつもなく良かったとか、相当かわいいとか単純な理由がいい役者としての認識になります。
ただ、今回拝見して少しだけ感じたことがあります。
分かりにくいとは思いますし、ちょっと語弊がある書き方はご容赦いただきたい。
自分の中で使っている言葉で役者さんとしての隙間がありません。
人が演技しているのを観るのが、ちょっと恥ずかしくなる時があります。
迫真の演技をしている時はそんなことを全く感じないので、恐らく、役者さんが舞台で役でなく、単なる個人として見えた時にそう感じるのだと思います。
これは旗揚げ公演の劇団を観た時などは、かなりの確率で感じることであり、ベテランと世間では呼ばれる役者さんも例外でない場合があります。
簡単に言えば、素に戻るみたいな感じでしょうが。
作品では、かなり特徴化されたキャラを演じますから、それが素になった役者さんが演じると、何かこっ恥ずかしい気になることは十分あり得ることだと思うのです。
これが、この方はありません。
今回、ちょっとそれを感じました。そして、過去を覚えている限りで思い起こしても、確かにこの点ではこの方は超越したところがあったような気がします。
それがいい役者としての認識につながるのかは疑問ですが、少なくとも私はいつも安定して役者さんとしてのぼんてんべすさんを舞台で拝見していたのだろうと思うのです。

一応、これで予習は済ませました。
本来は次回公演に近い世界だと言われているユメリアを観ておくべきなのですが、実際の観劇がありますので、とてもそんな時間はありません。
この印象を持って、人数も少なくなって恐らくは今後の劇団としての転換点となるであろう、次回公演を楽しませてもらいたいと思っています。

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コメント

予習お疲れ様でした!大牧ぽるんです。
本当に嬉しいです。ありがとうございます!やったかいがあったなぁ。しんどかったけど、笑

さて来週はぼんてんべす最後の力を出し切ります。
お楽しみに!SAISEIさんの心に、皆様の心に届くようにがんばります!

投稿: 大牧ぽるん | 2012年2月11日 (土) 01時13分

>大牧ぽるんさん

公演前のお忙しいところ、コメントありがとうございます。

あんな感じで日々稽古してるんだね。
後ろのシェードがきちんと閉まってないのがすごく気になったけど(゚ー゚)
面白いもの観せてもらいました。

公演、期待しています。
毎回のごとく、ハードルは上げています。
今回は特にご存知のように激戦週。
幾つかを切って観に行くだけに、その上がりっぷりは・・・

まあ、半分冗談で、皆さんが楽しく舞台で活躍されるのを楽しみにしていますから。

投稿: SAISEI | 2012年2月11日 (土) 23時10分

遅ればせながら、ぼんてんべすです!
こちらの方では初めてですが、失礼致します。

『不思議の國の二人のアリス』、鑑賞有難うございます。
公演版とオリジナル版とで、そういった見方をされていることに嬉しさと驚愕を感じました。

看板女優、というとても大切な言葉を団長は私に渡してくれて、私自身その言葉に本当に自分が副えているのかとても不安でいましたが、SAISEIさんのお言葉を聞いて、何か心にぐっとくるものを感じました。お客様であるSAISEIさんが私という役者を見て、何か言葉を言ってくださること自体が、本当に自分にとって力になるんだなと改めて気付かされました(笑)
今更ですが!

退団ということで、悔いも残さず最後の芝居に胸はって立てるか、と考えると、今までのことを思い返すことも多かったので……、SAISEIさんのお言葉が、今とても有難く思います。

退団関係なく、今回も皆一致団結して、伝えることに一生懸命になっている舞台です。是非、楽しみにしていてくださいね!!

長々と失礼致しました。
今回こそSAISEIさんと、きちんとお話できたらいいなと思います(笑)
激団しろっとそん、空飛ぶ本屋さん、両者とも宜しくお願い致します!!

投稿: ぼんてんべす | 2012年2月13日 (月) 00時20分

遅れ馳せながら感想ありがとうございます!!
しろです、いつもTwitterありがとうございます(*^^*)


被り物、そうです、あれは猫かぶりならぬうさぎ被りでした。笑

そういえば本日お誕生日なんですね!!
おめでとうございます!!

ではでは、空飛ぶ本屋さんまで後4日!!
会場でお会いしましょう!!(*^^*)

投稿: しろ | 2012年2月13日 (月) 18時17分

>ぼんてんべすさん

本番前に申し訳ない。
コメントありがとうございます。

素人の勝手気ままな思いを書き連ねただけですが、魅力的に思ってずっと舞台での姿を拝見してきたんだと理解していただければ幸いです。

胸張って、舞台に立ってください。
私も含め、多くのファンが活躍を楽しみに足を運びますから。

投稿: SAISEI | 2012年2月13日 (月) 19時04分

>しろさん

あ~、しろさんまで。
団長指令が入りましたか。お忙しいところに申し訳ない。
ありがとうございます。

うん。最近の役のせいか、もうファンタジーの姿がちょっと面白くなってきちゃった。
前は時計ウサギみたいな冷静な感じがお似合いだなあと思ってたんだけどねえ。
どっちに騙されてるのかなあ(゚▽゚*)

厄年を迎えたおじさんが、初日と千秋楽に伺います。
しろさんはじめ、皆さんの一致団結した姿、楽しみにしています。

投稿: SAISEI | 2012年2月13日 (月) 19時10分

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