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2012年2月16日 (木)

半神【ブラック★タイツ】120215

2012年02月15日 世界館

休憩はさんで2時間半の大作。
う~ん、疲れたというのがまず最初の感想。

この作品、昨年の10月に関西大学万絵巻の公演で拝見していたのが功を奏していますね。
最初、観た時はあまりにも自分が思い描いていた半神と違い過ぎて、舞台作品にするとこんなになっちゃうんだという印象が強く、また野田秀樹さん特有の言葉遊びの面白さがあるものの、何か難しく仕上がる話にちょっとやられましたから。
今回は、そんな経験が活きて、とても楽しく拝見できました。失礼ながら、万絵巻さんを踏み台にしての観劇。深いところは相変わらず掴めていないものの、かなり感覚的に色々なものを感じれて観れたんじゃないでしょうか。万絵巻さん、ありがとう。

劇中劇のスタイルをとるメタフィクション構造が、逆に話を分かりやすくしているような気がします。これは、いつもこのメタフィクション構造の複雑さに頭を混乱させられて痛い目に合うことが多い私にとっては新しい発見です。
わざと難しく創って、私のように感性低き者が困り果てる姿をあざ笑っているのではと悪意的に感じることもありましたからね。そんなことはなく、やっぱり、作品の本質をより感じてもらえるようにするための手段としているのでしょう。少し観劇レベルが上がったのではないでしょうかね。非常に自分にとって嬉しいことです。

とにかく美しい作品でした。
狂おしいほどの愛と孤独を感じさせる話。
それが幻想的でカオスの世界で描かれます。
これは萩尾望都さんの原作を読んだ時に感じたままであり、それが舞台で視覚化されています。

長時間の作品ですが、後半にいくほど集中力は逆に上がっていくように、その世界に引きずり込みます。
じわじわと完全に作品の世界に入り込んだからか、ラスト近くの双子の物理的には別れ、精神的には融合を思わすような二人の演技は、あまりにも美しく目を奪われます。
照明やら音響やらの効果ももちろんあるのでしょうが、この感じた美しさは役者さんから溢れ出てくるようであり、おおげさに書くともはや人ではなく、この作品名でもある神をイメージさせる姿です。
また、配役表無いから、役者さんの名前が分かんないんだよなあ。劇中で名前を呼び合うシーンはあるのですが、聞き漏らしました。
1人は灰野優子さん。本編終了後のライブイベントで出てこられたのでこの方だけは名前が分かりました。
もう1人は・・・
本当に神がかった素晴らしい姿でした。どれくらいかと言うと、ライブで素で出てこられた時、えっ誰この人って思ったくらい。

野田秀樹さん特有の言葉が記号のようにたくさん出てくる。
単純な言葉遊びもあるし、複雑で観念的な言葉が理屈っぽく並ぶ時もあり、比喩表現が突拍子も無かったりする。これを一つ一つ理解していこうとすると、必ずどこかで置いていかれて、もう無理となります。これがイコール作品が分からなくなることではありません。と、最近気付きました。
そんな言葉は、もう感覚的に流していけばいいのです。言葉を理解するのではなく、感じるようにすればいいんじゃないでしょうか。
ただ、今回、思ったのは、感覚的に流すと言っても、使われた言葉が必ず何らかの形で話の中で回収されているようですね。単に放り投げているだけではありません。分かりにくいでしょうが、言葉自体が伏線みたいになっていることが多々あります。この作品では最初になぞなぞとして放り投げた言葉の答えを最後に得るようなところがあるので、何となくそうなっていることに気付きました。
こういうところが、劇評家さんとかにとってはたまらなかったりするんでしょう。素人の私なんかはこの人よく分からんよと思ってしまうのが、素晴らしいと絶賛されていることが多いですから。

にしても、客席満員。
開場前から世界館から人が溢れ出てくるような状態になっていました。それも若い女性方で。
誰目当てなんだろう。
私なんて知っている役者さんとしては福地教光さんと上野真紀夫さんしかいませんからね。
この二人? いやいや、かっこいい役者さんではあるけど、そこまで人気無いだろう。それとも時代がやってきたのかな。
福地さんはもうすっかり暴力ばかりふるう悪い役イメージになっているのですが、今回みたいな役の方がすごく好きだなあ。双子の家庭教師なのですが、心の底から二人を思う優しい役。つながった双子と、これまたつながっているかのように、同じように悩み苦しみ喜び合う。双子は切り離されますが、心はいつまでもつながったままです。と言うか、1つの心みたいな感じです。そのことを強く感じさせるのが、二人をずっと見守り、そのつながりを双子以上に信じて思いやってきたからのように思えるのです。愛を知ったがゆえに、同時に知ってしまう孤独があることを一番理解しており、その愛の尊さ、孤独の悲しみを知ることになる双子を守ってあげれる大事な人だったように思えます。
上野さんは双子の父親役。元々、脚本上でこの双子の両親は少し浮いた感じになっているんでしょうかね。万絵巻さんの時もそんな感じでした。その、ちょっと浮いた感じが実にうまくはまっている。コメディー要素もかなり取り入れている作品ですが、このあたりは任せておけと言わんばかりの大活躍でした。

この半神はやっぱりすごく面白い作品だなあ。
もっと、色々な劇団でどんな感じになるのかを観てみたい。
まあ、いずれどこかで公演されることもあるでしょう。
これからの観劇の楽しみの一つになりました。

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