ツキノウタ【満月動物園】120212
2012年02月12日 シアトリカル應典院
死神シリーズ第3弾。
第1弾のツキカゲノモリは観劇始めたばかりで見逃していますが、第2弾のツキノオトは拝見している。
このブログにも感想を書いている。
この作品を観劇する前に復習で読み返してみたが、さっぱりストーリーが思い出せない。
元々、自分の覚書のために始めたブログじゃなかったのか。機能してないじゃないかとちょっと自分にイラ立つ。
同時にネタバレが申し訳ないなあなんて思いながら書く時があるけど、さほど気にしなくてよさそうだ。だいぶ自惚れていた。これからは気にせず思う存分書こう。
ただ、読み返して思うが、ちょっと前作は相関図、複雑だったんじゃないだろうか。
それに比べて今回は単純明快。
走馬灯ファンタジーと名打った、一人の男の人生振り返りだ。
と言っても、単に振り返るだけではない。
その最期に、生まれてきたこと、大切な周囲の人との絆の中で生きてきたこと、その生きた証が残された者に伝わっていることを感じた上での死。
悲しい死が尊いものに思われ、それが生きるということを同時に大切に感じさせられる。
上述したように一人の男の死の直前の走馬灯を描いた作品。
恋人と一緒に行った遊園地で一人だけ乗った観覧車が崩壊する。
特に大した人生でも無かったが、落下する中、死にたくないと感じた瞬間、目の前に死神が現れる。
死神は、死ぬ前に行きたいところに連れて行ってくれるという。
あの日、あの時、果てには未来まで。
死神と男、なぜか疫病神、そして貧乏神を巻き込んだ男の走馬灯の旅が始まる。
赤い毛糸玉で紡がれた母の愛情がこもった品。
いつの日か想いが通じ合わなくなった母、いつも自分を心配してくれるかわいい妹、かわいがってくれて母のように思っていた父の愛人。
そんな人たちと過ごした小さき頃の思い出。
人生の行き場を無くした時に路上で出会った一人の女性。
彼女の歌声に癒され、疲れた人生をリセットしてくれた日々。
彼女との愛の結晶。
自分と母との大切な絆の証、赤い毛糸玉が、自らが愛した女性の手によって、子供、孫へと紡がれる未来。
貧乏だけど、その愛をしっかり受け止めて育っている孫。
そんな走馬灯の中で、男は人生を見つめ直し、自らの幸せを感じながら最期の時を迎える。
ラストは死というエンドですが、それを単なる悲しみと捉えないようにするための走馬灯の旅ですから、当然、悲しくはありません。まあ、死ですから、皆無と言うわけにはいかず、話の主題とかは関係なしに何とかならんのかいなとかは思いますが、いたしかたないでしょう。
それよりも、愛し、愛されて生きていたことが描かれており、また毛糸玉という視覚化された、まさに紡ぐという言葉がぴったりな愛や絆の象徴が受け継がれていく様を見ることになりますから、むしろそちらへの想いが強くなります。
まあ、残念な事故ではあるが、幸せだったと本当に思えて死んだんだからよかったなと。そして、死とは本来、走馬灯があるかどうかは別にして、こういう形で迎えたい。こういう形で迎えられるように生きたいというのが得られた気持ちです。
男を演じるのが谷屋俊輔さん(ステージタイガー)。
この方の一人語りは最高。引き込み方が半端じゃありません。
実は、昨年だったかはやぶさという作品で一人芝居をされているはずです。Twitter、ブログ、風の噂から絶賛の声が相当上がった作品です。
ただ、私は恐らく、初演で拝見しているのですが、この時が正直いまひとつに思えて、このブログにも出来が悪いなんて偉そうなことを書いているはずです。その時は、確かに色々なミスが目立ち、それを取り繕うような感じで良くなかったと本気で感じたのです。元々、雰囲気のある優しい表情で力強さを込めた演技がとても好きだったので、けっこうショックで、それ以来あまりいい役者さんとして名を挙げなくなっていました。
今回、それが完全に拭い去れて良かった。やっぱり、谷屋さんはこの優しい表情で、想いを噴き出しながら、舞台に素敵に立たれている姿が最高にかっこいい。自分の気持ちが元に戻ったのがすごく嬉しい。
死神、疫病神、貧乏神。順に河上由佳さん、高島奈々さん(七色夢想)、松本茜さん(劇団レトルト内閣)。
上には記していませんが、突拍子も無く出てきているわけではなく、男の人生にどこかで絡んでいるような設定です。
このお三方の掛け合いが面白い。観方によってはコメディーでしたとしても、もういいんじゃないかと思うぐらい。
淡々と感情をあらわにしない死神、ナイーブなKY感たっぷりの疫病神、柄悪いおっさんのような貧乏神。
キャラ設定も楽しく、話を退屈させずに盛り上げられます。
たぶん、高島さんは初見だと思うのですが、魅力的な方でした。歌って登場です。この作品、歌には定評がある西原希蓉美さんが彼女役として出られており、もちろん得意の歌を披露されるのですが、負けるとも劣らずです。
歌もそうですが、出演されている女優さん、全員声がすごく綺麗だったな。外観も綺麗だしな。作品の雰囲気も綺麗だし、綺麗ずくめにしたんだな。
とても美しい話でした。
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