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2012年2月 9日 (木)

トンマッコルへようこそ【劇団桟敷童子】120208

2012年02月08日 ドーンセンター

韓国では有名な映画みたいですね。
事前にどんな作品なのかを少しだけ調べていったのですが、朝鮮戦争を題材にした話のようです。
実は個人的にあまり海外の戦争映画が好きじゃありません。
南京大虐殺、パールハーバー、ベトナム戦争・・・、数多くの戦争を題材にした作品があると思います。
どの作品もそこに反戦、平和への願いを込めているのでしょうが、それよりもこんなひどいことをあいつらにされたんだ、それを忘れるなみたいなメッセージの方が強く伝わる時があって嫌な気分になる時があるのです。
もちろん、負の歴史を無かったものにするかのように忘れちゃえばいいなんて思っていませんが、今となってはもう憎しみ、恨み、悲しみを主張するより、そこから得た未来への祈りを追求して欲しいのです。
現実ですらなかなかそうならないので、せめて作品ではそうあって欲しいというのが私の考えです。
虚構であるからこそ、成しえることだと思うのです。

その点で、この作品は本当に素晴らしい作品でした
その構成に感動しました。
朝鮮戦争における敵対する人民軍、韓国軍、連合軍の兵士がある村の人達と普通に笑いあって撮影されたありえない写真。
その写真が出来上がるまでの過程を、その村に住んでいた亡き父から聞いた話として、作家が描いていく形で話を展開します。
その写真こそ、平和の象徴、未来への祈りであり、それがどう出来上がったのかを追求する話は、どうしたら、世界がこんな写真のようになるのだろうかを追求することそのもののように感じるのです。
しかも、後半は、亡き父から最後まで聞き取ることが出来なかったので、作家が想像する話になります。
これこそ、作家、私たちがこの写真の世界、戦争の無い平和な世界を一緒になって作り上げることになっています。

コロスを用いた、メタフィクション的な仕掛けをした作品です。
上述したように、作家が1枚の写真を基に、亡き父から聞きだした話から作った物語を私たちに聞かせるような形です。

舞台は山奥のトンマッコルという村です。
ここには戦争とは無縁で、平和に暮らしている村人が住んでいます。
その村に、不時着した連合軍のアメリカ軍兵士、韓国軍から脱走してきた国防軍兵士、山に迷った人民軍兵士が偶然にやってきます。
当然、敵対する兵士たちは、一触即発。村で殺し合いが起こるぐらいの状態になります。
でも、村で一緒に生活をしている間に、この村の純朴な人たちに感化され、互いを理解し合うようになります。
このあたりは、実にユーモアたっぷりに描かれており、どこか間の抜けた村人と前線に立ちピリピリしている兵士たちのとても戦時中だと思えないようなおかしな掛け合いに笑わされます。

分かりあってみんなが一つにまとまったというあたりで話は終わります。
ここまでしか亡き父からは聞き出せなかったようです。
写真がどのように撮影されたかはここまでで納得いく説明が出来ます。
ただ、なぜその写真が今も残り、いくら山奥とはいえ戦火を浴びることなく、この村が救われ、父もこの歳まで生きながらえたのか。
ここからが、作家が想像する話です。
村に査察に来た韓国軍の情報では、この村は空爆のターゲットになっています。本来ならば、村は壊滅。父もその時に死んでいたはずです。
その山に残る5人の墓標。敵対する軍が入り混じったものです。
この事実から想像できる話。
この村で互いに何とか軍の兵士ではなく、人間同士であることを理解した兵士たち。
平和の象徴であるこの村の存続こそ、多くの過ちを繰り返してきてしまった兵士たちの償いとともに、未来の平和を託すことだったようです。

全員で笑顔で写る写真は美しく、そこには争いなどは何も感じません。
世界が100人の村だったらみたいな話がありましたが、この作品においても20人ぐらいの人が写る写真。
そこには老若男女、国籍の違う人、価値観の異なる人が存在しています。
100人に満たなくても、この写真こそが世界だったら。
平和の作り方の基本がそこに隠されているように感じます。
願わくば、自分が生きるこの日本が、このトンマッコルのような存在であり、平和への発信基地であればいいのになあと思います。

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