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2012年1月 5日 (木)

<DVD>ちゃらんぽらんな夜に・・・。【劇団伽羅倶梨】

先日、拝見した公演時に購入したDVD。昨年、春の公演作品です。

これだな。
悪い人が全然出てこない、善意の塊で出来ている温かい作品。
初めて拝見した時に感じたままの印象が今でもそのまま残っていた。

ベタベタのハートウォーミングな話で、何やら難しい趣向の演出が入るわけではない。話の先は読めるし、ほぼそのとおりに展開する。
後で深く噛み砕く必要も無い。流れに沿って観ながら、心響く優しいものを感じればいい。そして、それをただ持ちかえって、いい思い出にすればいい。
物足りない感もあるが、やっぱりこういう作品が大好きだ。

舞台は便利屋の事務所。
こちらでおおかたの話を進行させる。
横にちょこんと環状線ホームのセットがある。
こちらでなされる会話が登場人物の心情を深く描いている。
これらを巧みに切り換えながら、話を展開している。

冒頭のシーンは年配男2人のホームでの会話。
同窓会で中学以来の再会。意気投合してつぶれるまで飲むぞとばかりにスナックへ。

翌日。シーンは便利屋事務所。
草むしりから、老人の話し相手、ヘアーカット、夜逃げ手伝い・・・、何でもやるアットホームな職場だ。
人のいい社長の下で、まだ若い者たち、いやちょっといってる人もいるけど楽しく働いている。
みんな、人の役に立って喜ばれることを嬉しく思って、やりがいもあるみたいだ。
その事務所の奥から起きてくる2人の男。
スナックで飲み過ぎて本当につぶれた2人は、どうやら近くのスナックのママにここに運び込まれたみたいだ。
ところが、ここで偶然に男の孫が働いていた。
専門学校も辞めて、偽名を使って働いたりしており、今までの人生をリセットしたかのような状態。
男は元刑事だっただけあって、厳格で理屈っぽいあまりいいおじいちゃんではなかったのだろう。
2人の仲には大きな溝がある。

そんな中、いつの間にやらその事務所で働き始める2人の年配男。
2人の草むしりは好評で、新規事業として始めた葬式・結婚式などなど、さくらの人を派遣する業務にも活躍するため、レッスンの毎日だ。
楽しくて仕方が無い。
今まで見せたことの無い笑顔を見せる男。それに違和感を持ちながらも、溝を狭めていく孫。

ある日、ひょんなことから、ある重大なことが発覚する。
元刑事の男の相棒。
この人が実は同級生では無い。随分と年下だ。全く見ず知らずの人だった。
悪気があったわけでは無い。同窓会のたまたまの流れにのってしまったが、楽しくて仕方が無くついズルズルと。
元刑事の男が父のように思え、しかも働く事務所の若者が自分の息子のように思えて嬉しかったらしい。

騙されたと知った男は落ち込む。
事務所の人もがっかりだ。
でも、どうなんだろう。
男の孫だって、名前を偽って働いていた。でも、懸命に働くその子を悪く言う人なんていない。
それに、そもそもこの仕事は嘘をつくような仕事。それでも、依頼主に喜んでもらっているのではないか。
何か悪いことだっただろうか。ちゃらんぽらんで済ませれることなんでは。

複雑な心境の中で、男を残して、他の事務所の者たちは社長の誘いでスナックで飲む。
その帰り道、ホームで電車を待つ若者たち。
自分達の未来、年老いた姿を思いながら、一緒に働いた男たちのことを思う。悪く思っている人などいないはずだ。まだ見えない遠い未来に自分達のかすかな光を見つけだす。
希望やら、未来への祈りを思わせる綺麗なシーンを作品中の若い登場人物が創りだしている。

男はホームで、騙した男と再会する。
楽しかった時間。今までにはなかった笑いの中での仕事。それ以外に何かを考える必要は無い。
2人が行くところは、お腹がすいているから、いつも食べに行っていた王将だ。
若者達のシーンと対称的に見えるこのシーン。それでも、見えるものは希望であり、未来への明るさだ。
どんな時代でも、未来は明るい。色々なことがあってもそう思える。だから、今を楽しく。そう思うとちゃらんぽらんという言葉が気負わず、安心できる魔法の言葉のように思えてくる。

心に残る素敵なシーンがたくさん散りばめられる。
ほとんどは、ちょこっとあるホームのシーンだ。
この小さな場所で、単なる話の進行の中では十分に見せれない奥深い心情を表現している。
電車が来るまでの短い時間の優しい時間。

男と孫が語り合うシーン。
何が溝になっていたのか。若いからこそ理解できないことも多かったのか。
男も、今、この作品の中で見せている姿では無かったのだろう。
何ともコミカルで温かみを感じる年の離れた者同士の会話は、年代を超えて共通する人の優しさを感じさせる。
この見ていて心が浄化されるような役者さんの表情、そして落ち着いた温かい時間はこの劇団の真骨頂だ。これが大好きなんだ。

先日、拝見した公演は、この作品が公演された同じ年の冬。
劇団30周年らしい。
長きにわたって、観る者に温かみをずっと与えてきた歴史はさすが揺るぎない。

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