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2012年1月 1日 (日)

<DVD>裸の女を持つ男【クロムモリブデン】

先日の本公演で、たまたま隣だったヘビー観劇客のお知り合いに薦められて購入したDVD。
面白いなあ。公演中にこの作品の上映会もあったので、行けば良かったよ。
ちょっとした解説もあったんじゃないか。これを聞きたかった。

薬物問題に対してマスコミに踊らされる一般市民を皮肉ったような作品。
当時の事件を盛り込むどころか、それ自体をテーマにしてしまってるところは、恐らくはパロった裸の銃を持つ男より上をいく演出か。
話は個性的な役者さんが狂気性のあるキャラで不気味な雰囲気を作り出し、巧みな掛け合いで笑いを散りばめながら進行する。

面白かったけど、後半、苦手な難しい部分が出てくる。
現実と妄想の間を思わせる展開。明らかに実名を想像できる薬物乱用芸能人は完全に現実の世界。一方、演劇作品として強調されたこの狂ったキャラ達は虚構であることを意識させる。
シーンが切り替わるたびに揺らいで観ていたが、きちんとストーリーに沿って楽しく観ていたのだ。
でも、後半に急にメタフィクション、入れ子構造って言うのかな。ある登場人物の描く小説の世界に連れて行かれる。劇中劇ってやつだ。
何が本当で何が嘘なのか。これまで観てきたもののどこまでが劇中作品の現実で、どこまでが妄想なのか。
初めから劇中劇だったのか。
混乱する頭の中で、ラストがまた、何の結論も出していないような形で放り投げて終えられる。
燃えさかる火の海で、全登場人物が気が狂って叫びながらエンドを迎えるが、気が狂って叫びたいのはむしろこっちだ。こんなことを同調させないで欲しい。

この劇団は癖になる要素が何かある。
薬物と同じく、常習性があるように思う。
それに踊らされる私。
いたいけな何も知らない一般観劇客を、真実、大事なところは隠して、それに気付かない者にはご自分方の思い描いたままの好きな世界に連れ込んでひっかきまわす。そのことに気付かない私のような客は、それを楽しんでしまっている。
これこそ、恐らく、この作品のテーマの一つであるマスコミと一般市民の関係であるように感じる。
きちんと見極める力を持たないと、こういう劇団には好き勝手にされてしまう。気をつけないといけない。
と、およそ、作品が本来意図することとはかけ離れた結論にたどりつく。

モーテルの一室。
漫画家が編集者に電話をしている。
薬物乱用sexで相手の女性が死んでしまったらしい。有名な女優みたい。
編集者はこの売れっ子漫画家を世の中から消すわけにはいかない。
知り合いの怪しい始末屋に連絡。遺体処理を依頼する。
始末屋の手下は、一人では荷が重い仕事なので、気が触れたおかしな友人に現場を任せる。
友人は死体を見て大喜び。あの女優を自分の好きなように出来る。
死姦して切り刻んで・・・

そんな中、モーテルに新しい来客。
元アイドル。夫が薬物使用で捕まって逃げているらしい。当然、アイドル自身も薬物中毒だ。幻影も見えているらしく、挙動不審だ。
対応するモーテルの管理人は、母と息子。なぜか体がつながっており、息子は母の言いなり。
満室だが、無理やりある部屋に入ると、そこには監禁された女性。借金返済のために売春をしている女が鎖でつながれている。管理人に囚われているみたい。
元アイドルも同じように監禁されてしまう。

一方、その頃、自宅に戻って来た漫画家と編集者。
待ち構える写真週刊誌の記者にゆすられる。女優とモーテルに入るところを写真におさめているらしい。
金で解決しようとしているところへ、女優の姉が現れる。
姉が行方不明だと。
混乱する中、うっかり口をすべらせてしまった漫画家によって、全員モーテルへ。

各々が後ろめたい思惑を交錯させる中で、事件の現場、モーテルに集結する。
そこで、・・・

と書きましたが、その後、話が収束するわけではなく、自体はむちゃくちゃになります。
そんな中で、ひたすら冷静を保とうと、とにかく漫画家に漫画を書かせようとする編集者が描く、この事件自体をネタにした小説の世界に連れて行かれます。
人が死んでいるという重大なる明確な事実に、全員が目をそむけ、各々の思惑を実現しようとする模様。
そこに醜さよりも、現代社会の当たり前が描かれているように感じてしまうところが恐ろしい。
特に、色々な流れから始末屋の手下が全ての責任を背負わされるところが怖い。最後はこの人が全て悪かったことになる。
この男、殺してはいないし、薬物もやっていない。実際に現場で遺体処理をしたわけでもないし、これを利用して金をゆすろうとしたわけでもない。
何が他の人と違ったかというと、この人だけ思惑が無い。こんな風にこの事件をもっていきた
いという方向性を持っていない。だから、餌食にされた。思惑が良かろうと悪かろうと関係ない。どう誘導したいかという意志が強い者が勝つ。
冷静に考えれば誰が悪いかは分かるはずなのに、めちゃくちゃになった事態にピリオドを打つために何らかの犠牲が必要だったのだろう。これで納得してしまうのも現実によくある話なのではないか。真実は特に関係無い。今の社会を彷彿させられる。

まあ、ブログという形で感想を書くので何か堅苦しくなったけど、実は狂った人達の事件に振り回される様を単に観てるだけでもおもしろい作品である。
何か特殊な演出をしているのだろうが、わざとそんなことを無視して楽しむのも一興だ。

昔、買ってそのままのDVDがあるので、また観てみるか。
こういう劇団は慣れもあるので、しばらく観ないと特に理由は無いけど敬遠してしまう。
多分、中毒性があることを本能で感じているんだろうな。

しかし、2012年年明け第1本目の鑑賞DVDとして、これはよかったのだろうか・・・

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コメント

好き勝手にされて、良いと思いますよ(笑)
2011/4/16・24の舞監日誌で書きましたが、クロムが在阪の頃には、このテイストの作品が多く、入れ子構造も更に複雑でした。
煙に巻いたようなラスト(パフォーマンス)は、観客に対するお礼のようなモノで、言いたいことは全てそれまでに言い尽くしたので、最後は楽しんで下さいとばかりの乱痴気騒ぎです。
青木作品のほとんどは、劇中でストーリーを全て語る場面があるので、それを聴けばストーリーは解る構成になっています。
この作品ではマネージャーが、ストーリーを作る役で登場し、『節電ボーダー…』では、妄想に閉じ込められた真犯人が書くシナリオとして語られます。
『節電…』のラストは、かなり解りやすかったですね。
私の昨年度ベスト5に入る作品でした。
私も昨年は300本近く観劇いたしましたが、「習慣HIROSE」「日々幸進」「舞台を中心に私が回る」「中西理の大阪日記」「こぐれ日乗」等、様々な観劇ブログのベスト作品が、それぞれに違い、皆さんの着眼点が全く違うのが面白いです。
私の知る、年間に最も観劇される方は中西理さんで、毎年350本以上の演劇を数十年続けて観劇されています。
私は観劇数も理解の度合いも、到底中西氏には及びませんが、演劇に携わる者として、せめて一般の観客に解説できる程度のスキルを身に付けておけるよう、ブログを続けております。
今年もどうか宜しくお願いいたします。

投稿: ツカモトオサム | 2012年1月 2日 (月) 08時40分

>ツカモトオサムさん

あけましておめでとうございます。
新年早々、コメントありがとうございます。

何か、変なの観ちゃいました(笑)
薬物乱用をパロったやつだとは知りませんでしたから。
その中にも、社会を皮肉った要素があり、さすがに名を馳せる有名劇団だけあるなあと。
それでも、やはりラストのぶち切れ感はどうも慣れませんね。いいお礼をしてくれるものです。
確かにそう思うと、節電ボーダー・トルネードのラストはどうなったのかが分かり、私としては受けのいい作品でした。
ただ、あちらは途中の展開が複雑。
ツカモトさんの詳細なブログも拝読しましたが、それでもまだしっくりこない始末です・・・

ベスト10も見ていただいたのですかね。
あんな感じになりました(゚ー゚)
記載いただいた方でまだ見てないブログも拝見しました。
他の方とも合わせて、幾つかの共通作品があって、イキウメとくじら企画を挙げられている方が多い。
くじら企画は確かDVDが出てるはずなので、また観たいと思っています。

今年も訳分からん作品に出会ったら、解説を求めてブログを訪ねさせていただきます。
今年もよろしくお願いいたします。

投稿: SAISEI | 2012年1月 2日 (月) 14時06分

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