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2011年12月16日 (金)

<DVD>機械城奇譚【少年社中】

前の記事のナナシと一緒にお借りしたDVD。
この作品も観劇にはまるきっかけになったらしい。
観終えて、分かる気もする。
松本零士の作品を思わすような幻想的な夜の世界で繰り広げられる舞台。
しっかりしたテーマを基盤にしながら、軽いコメディータッチで進む話の展開。
突然、重苦しくなる展開の起伏の激しさ。
漠然と感じながらも、ラストに分かるかなり意表を突く仕掛け。

全て、映画・テレビ・本でもあるのだろうが、演劇として観ると際立って感じることが多くなるような気がする。
きっかけになって色々な作品を観ようと思わすには、かなり適した作品のように思う。

それにしても、ラストは見事な仕掛けだった。
全く分からず最後、急にそれが分かるのではなく、じわじわ、じわじわ何かある、それも哀しい何かがと思わせておいて、それをはっきりさせる。
いやらしいと言えばいやらしい演出の仕方だ。
手のひらの上で転がされた感じかな。

壊れた機械ばかり置いてある機械城と呼ばれる店。
壊れていない物といえば、ラジオぐらいか。
店の機械には至る所にメモが貼られている。
店の主人の男。
言動がどうもおかしい。すぐに自分の言ったことやしたことを忘れてしまうようだ。

女が訪ねてくる。呼び出されたようだ。
店長曰く、この中で一番素敵な機械を決めてくれと。
店長の別れた妻のようで、いきなり呼び出された上に、わけの分からないことを言われて機嫌が悪い。
そんなこと自分で決めろと言っても、自分は明日死ぬからダメだと言う。

そんな中、たくさんの人間が現れる。
この人間の正体は、ここにある機械。
映写機、ピンボール、バイク、ボイラー、タイプライター、オーブン、拳銃、そして今日入荷したばかりの時計。

信じられないが、本人たちはそうだと言い張る。
自分たちは奇跡を起こしてきた特別な機械なのだと。
そして、今からそれを各々プレゼンするので、それで選ぶということになる。

ここから、各機械によるエピソードに入る。
作品の伏線になる話から、劇中劇のようなスタイルで行われるコメディータッチの三文芝居、温かい思い出話などが繰り広げられる。
それだけでホロリときたり、役者さんの個性的な魅力を味わえる楽しい時間帯だ。

これが終わるあたりで、話の芯が見えてくる。
この店の主人は若年性アルツハイマー。
過去を失うということは、同時に未来も失う。
明日の無い自分を悲観して自殺するつもりなのだ。
だから、拳銃とかも置いてある。

機械たちは自分たちを大切に扱ってくれた心優しい主人のために、それを思い留めさせようとしてこうした宴を開いている。女も元妻でも人間でもない。ここに置いてある、ある唯一の機械だ。
恐らく、明日になれば主人はこのことを忘れる。
だから、また明日の夜も宴を開いて、思い留めさせる。
毎夜、繰り広げられる終わることの無い悲しい宴。

今夜もそうなるはずだった。
いつもは主人は自殺を思いとどまるはず。
でも、この日は新入りの時計がいた。
時計の正体は・・・
だから、この日はうまくいかない。主人は自殺する。

時計なんだから時間を戻せるはず。
奇跡の力を持つんだから。
時間を戻せと願う機械たち。また同じことを繰り返すだけで意味が無いと言う時計。
機械であるが、主人を愛する女が必死の思いを語る。
記憶を失ってもいい、今を一緒に入れるならそれで・・・
ラジオから優しい声が流れる。

はしょりましたが、あらすじはこんな感じ。

最後は冒頭のシーンに戻ります。
つまり、時間が戻ったことを意味しているのでしょう。
そして、主人と女が同じ会話をします。
でも、結局、また同じことを繰り返すだけですよという結末ではありません。
冒頭と少しだけ会話が違います。
主人が女に対して、いらっしゃいませと反応します。
冒頭では最初は無視しています。
昨晩の必死の思いが頭のどこかにわずかだけ残っているのかな。それで女を認識出来たのでしょう。
そして、恐らく、これから先の宴では違う展開が生まれるはず。
こんな希望を残したうまい終わり方。

実は、会話が違うことは最初、気づきませんでした。
DVDなので見返して比較して違うことを確認しています。
会話が違うことは気づきませんでしたが、雰囲気が明らかに違うことは多分観れば分かると思います。
私もそう感じて、何か違うのかなと調べたので。
店の主人は小林至さん(双数姉妹)、女は大竹えりさん。
このお二人の役の心の中を外に表現する力なのでしょう。ほぼオーラだけでそれを伝えるのだから凄いものだなあと思います。

あと、目を引いた役者さんは、堀池直毅さんでしょうか。映写機役です。
機械たちのリーダーでもあるので、支配人風の役作りになっています。
このコテコテの支配人ぶりがとてもお似合い。
通常ニコニコしているだけに、締める時の真面目な表情がかなり活きてきます。

ナナシで拝見した森大さん。ここでも、おふざけ小ネタを色々と挟み込まれています。ピンボール役。
すぐ女をくどく外観どおりのイケメン男になっています。機械の動きを基本的に組み入れて演技されますので、手や足をクネクネとふんだんに動かされています。

とてもよく練り込まれた話でした。
どこか悲しいけど、嬉しくもある。
その程度のかすかな希望を感じさせるような作品がいいように思います。
今回、鑑賞したのは2010年に劇場MOMOで行われたものです。
この後も再演されているみたいです。
そして、その時には電話とかここには出ていないキャラもいるみたい。
話も変わっているのかな。
ちょっと興味ありますね。また、何かの機会に観てみようと思います。

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