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2011年12月18日 (日)

パパを尋ねず散々に【劇的☆ジャンク堂】111217

2011年12月17日 芸術創造館

正式な作品名は「パパを尋ねず散々に 誕生日祝いの待ち合わせ場所がお化け屋敷の楽屋でスタッフが素に戻ってる」。

作品名どおり、お化け屋敷の中で起こるドタバタコメディー。
シチュエーションを活かして、役者さんが各々、濃いキャラになって面白おかしく演じられます。
その中に隠された家族愛のテーマ。
少しほろりとくる、心温まる作品でした。

(以下、ネタバレ注意。公演はあと、本日だけですが、一応、白字にしておきます。)

一応、設定上は零~拾番地まである巨大お化け屋敷。
その中で新しく出来て試運転中の弐番地が舞台。
舞台はお化け屋敷のある部屋と楽屋のスペースを設けている。

カップルのお客さん。
客席をお化け屋敷と見立てて登場。
ずいぶんと怖がっている様子。

ある部屋まで進んできた時には、もう彼女の方はぐちゃぐちゃ。
彼氏も何かバタバタしている。
同じように、バタバタした人がいる。
若い青年に年配の男。
出口を必死に探しているようだ。

楽屋。
いつものとおり、お化けのメンバーがたむろしている。
よその番地から来て居座っている男、パンダの着ぐるみ、全身黒タイツ、お面、白塗り。
リーダークラスのちょっときつい女に、とにかくうるさい責任者。

そんな中、ある少女が楽屋にやってくる。
社長の孫。今日は社長とこの子の誕生日。
ちょっとお嬢様風で生意気だが、けっこう話すと無邪気な一面がある。悪い子ではない。
社長がどうやらお化け屋敷に迷い込んでしまったみたいだ。
それでご機嫌ななめになっている。
探しに行かなくては。

そういえば、今日は新人のバイト君が来る日でもある。
まだ来てないけど、お化け屋敷に迷い込んでいるのでは。
カップルって、パニくってたけど、今、どこにいるんだ。
社長って、多分、あのオドオドしていた男なのでは。どっかで見かけたぞ。
そうこうしているうちに、社長の娘さんも逃げ出しちゃった。

お化け屋敷の中を、お化けたちが駆け回る。
この慌ただしい状況はきちんと収束するのか・・・

こんな感じでお化け屋敷内と楽屋でシーンを切り替え、スレ違いさせながら、人探しを進めていく。
その中で、楽屋にやってきた女の子の父親に対する思い、父親が娘を思う気持ちが明らかになっていく。
決してうまくいっていない二人。色んな事情で、まだ親子とはいえない。
ただ会うだけでは、何も変わらないだろう。
でも、何かきっかけさえあれば、きっと親子になれる。
二人ともそれを求めている。素直になれなかったり、ちょっととまどっているだけ。
そのきっかけを、偶然にもお化けが作ることになる。

最後はこの日が親子の出発点になったというような、ハッピーエンド。

素直になれない生意気な女の子、中山美咲さん。
父親としての自信がまだ持てないのか、でも、娘のことを大事に思っている男、黒澤誠さん。
お二人とも、恐らく実年齢とかけ離れた役をされている割には、あまり違和感がありませんでした。
娘の気持ちが分かってテンション上がっているのに、未だに娘を呼び捨てにする勇気が湧かないところなんかは、なかなかの感情表現。
最後まで生意気を崩さずにいながらも、やっぱり嬉しいという子供のような無邪気さも、照れくさそうな笑顔で表現されていました。

上記あらすじに全く書いていませんが、実は重要な役どころ、ある部屋を担当するお化け。西田美咲さん。
今回の観劇はこの方がきっかけです。カメハウス、LINX'Sで拝見してちっこい体でパワフルに踊るダンサーさんとしての認識が強いので、演技はどんなもんなのかなあと思って。
見かけと同じく、可愛ら・・・、いや・・・、これはおっさんキャラだよ。よく行く立ち飲み屋にいるもん、こんなおっさん。イメージがガタガタに崩れましたわ。
で、面白い。20歳にはとても見えない幼さを活かした自虐ネタから、一人妄想コントネタみたいなものまで、たっぷり。それに、踊りが無い芝居でも、ダンス技術はこう活かせるんだね。奇妙な動きは、芸術的とも。
楽屋から逃げ出してきた社長の娘をかくまい、一緒に遊びながら、その子の気持ちを引き出していく。
女の子は父親と血がつながっていない。嫌いじゃないけど素直になれない。だから、ずっとスレ違い。
このお化けも、昔、血のつながっていない義兄とちょっとしたことから別れてしまっている。
偶然にもこのお化け屋敷でその義兄と出会う。
その子を父親に対して素直にさせるために、自分自身が素直になる見本を見せる。
ごめんなさい。ほら簡単に言えるよ。これが大人ってやつだ。
何か男気を感じさせるような演技です。
ガラの悪いお化け、社長の娘と一緒になって遊ぶ、義兄に謝る、娘を諭す・・・
当たり前だけど、全て表情が違う。
その変化がさすがは女優の貫禄で、ガラ悪いところから、素直になって涙を見せる急激な変化に瞬殺。義兄も穏やかでとても優しい表情をします。山下裕矢さん。
一瞬で涙がホロリと。油断してましたねえ。無意味に咳をして泣いたのごまかしましたが。

お化け屋敷の面々は、とても特徴づけられており、その絶妙な会話の掛け合いはなかなかの面白さです。
とにかくうざい、途中から本気でいら立ってきたカップルの彼女、野村由貴さん。何かとにかくもどかしくてイライラする彼氏、緑川岳良さん。
破壊的に時折絶妙なタイミングでボケる着ぐるみお化け、Magumaさん。自分の世界に一人入り込んでしまっているタイツお化け、山中一輝さん。漂々とした感じでナンセンスなギャグを飛ばすお面お化け、五味たろうさん。おかしなキャラで騒がしく場を壊す白塗りお化け、森岡晶子さん。
一人パニくってまともにしゃべれない新人バイト、山尾拓未さん。
ガツガツやってきて好きなだけ騒いでいく責任者、山元美紗さん。まあ、唯一のツッコミ役なのかな、しっかりした厳しいマネージャー、本田夏実さん。

色々なボケが飛び交い、それを基本的にはマネージャーさんがツッコんでいるような感じですが、そんなにさばけるわけでもなく、その場に応じたキャラのツッコミで掛け合いが繰り広げられます。
これが、楽しくもあるのですが、気になったのは、何か飲み会を見てるような気分になりました。
隙あれば、ボケて受けを狙い、そのボケを隙あればツッコんで場を盛り上げようとするような感じ。恐らくは仲間意識がとても強いのでしょう。みんなで楽しく創り上げた感はすごく伝わってきます。
この飲み会の雰囲気は一歩間違えば、相当作品の評価を落とすような気がします。
本来は人の飲み会なんか見てても面白くないですもの。楽しいのは多分、飲み会に参加されているご本人方。
要は、自己満足の作品になる可能性が秘めている気がするのです。
今回は私はそれを感じていません。でも、今後、違う作品を観た時にそうなるかもしれないなと少し感じた次第。
5回公演とはいえ、劇団という形では今回が初めてらしく、まだ色々とスタイルも変わってくるでしょう。
今回のような作品が観れるなら、今後も注目する価値は十分あるように思います。

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コメント

ご来場ありがとうございました。
メンバー一同よりいっそうの精進をしてまいりますので、またお友だちをお誘いのうえ、共に作品の空気感をつくっていってください。

投稿: 五味たろう | 2011年12月19日 (月) 18時52分

ご来場ありがとうございました。
とても参考になる意見、そして物語の分析…嬉しいです。

客演の身でしたが、また公演があるときに、是非ともいらしてください。

投稿: Maguma | 2011年12月19日 (月) 22時34分

>五味たろうさん

コメントありがとうございます。

楽しく、そしてちょっと感動しながら拝見しました。
独特の何とも言えない空気があって、いいチームだと思います。
今後も楽しみにしています。

話はとても好きですね。
うまくはまり合わないけど、互いに思いあっている優しい感情がうまく描かれているように感じました

また、次回作で。
ありがとうございます。

投稿: SAISEI | 2011年12月20日 (火) 14時08分

>Magumaさん

コメントありがとうございます。

おかしな役でしたね。
いい間合いでしゃべるセリフに笑わせてもらいました。

芸名が珍しいから覚えやすい。
また、どこかの公演で拝見できるのを楽しみにしております。
今後ともご活躍ください。

ありがとうございました。

投稿: SAISEI | 2011年12月20日 (火) 14時10分

コメント、遅くなり申し訳ございません。
西田美咲です。
実はこのページをブログとは別にお気に入りに登録して、
何度も何度も読み返させて頂いては涙ぐんでいました。

ほんとにカメハウスとLINX'sとではキャラが真反対でしたのでどう受け取っていただけるか不安でしたが…。
おっさんでいいです、もう。
けっこう素の西田がおっさんっぽいので慎役の西田でインプットしていただければ幸いです。
今後も劇的☆ジャンク堂はもちろん西田美咲もよろしくお願いします。
またいつかどこかでお会いできることをたのしみにしております。

投稿: 西田美咲 | 2011年12月22日 (木) 19時48分

>西田美咲さん

コメントありがとうございます。

涙ぐむって、おっさんとか書いたから悔し泣きかなあ(゚ー゚;
とっても魅力的なお姿でしたよ。

がちゃがちゃした設定の割には、綺麗にまとまったエンドを迎えて、とても好みの作品でした。
綺麗にまとめるところで、西田さんのいい役どころが光ってましたね。
姉御風のキャラ設定でも問題ないのに、あんなキャラにしたところが演出として面白く、また、演じ手の多才ぶりが活かされているように感じます。

また、どこかの舞台で拝見できるのを楽しみにしています。

ところで、つぶやき拝見しましたが、マッカランなんてお子ちゃまにはまだ早すぎます(゚▽゚*)
私ぐらいの本当の親父がこだわって飲む酒ですから。
本当に素も親父が入ってるのかな。

投稿: SAISEI | 2011年12月23日 (金) 11時53分


初めまして〜σ(*´∀`*)

私もこの舞台見に行きましたよ
(*^¬^*)!!

素敵な舞台でしたね〜
castさん・staffさんに感謝
です(o^ O^)シ彡☆

投稿: 大阪府の演劇部員 | 2011年12月23日 (金) 19時49分

>大阪府の演劇部員さん

コメントありがとうございます。

分かりやすい、ハンドルネームだなあ。
どこの劇団の方だろう。
機会あれば、観に行きますけどね。こんなブログでもご縁ですからね。

とてもいい作品だったと思います。
話の主題、役者さんの魅力が明確でした。

いい作品に出会うと、本当に役者さんはじめ、それを支えるスタッフさんへの感謝の気持ちが湧きますよね。
演劇は素晴らしいです。
それに作り手として関わられていることは誇りですね。

投稿: SAISEI | 2011年12月23日 (金) 22時48分

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