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2011年12月15日 (木)

マリコのために【ピンク地底人】111215

2011年12月15日 東山青少年活動センター創造活動室

まあ、分かってたんだけどね。こうなるのは・・・
ここ、4回目の観劇。
1回目の「EX.人間」は記憶から完全に消え、2回目の「FLOWER OF ROMANCE」はこれまでに観たことの無い特殊な演出にやられる。この時の観劇中に分からなくてどうしようという気持ちは未だに覚えており、トラウマになっています。
3回目は「ある光」。この時、ある瞬間に急に何かが分かり出し、後半すごく面白いと思って観ました。
でも、やっぱり特殊な演出で話の真意はつかめず。
今回は、戯曲の「イェルマ」とかいう作品から、この難しい妄想世界をいつも作りだす作・演のピンク地底人3号さんがインスピレーションを受けて創り出された作品です。

また何かが降臨するだろうと思っていましたが、いっこうに降りて来ず。
その代わりに、あの忌まわしい眠気が降りてきました。
ノイズを感じる静寂な中で、役者さんがおりなす言葉の連呼。
妙な心地よさの中で、夢の世界へ・・・

だから、感想は気持ち良かったということになります。
仕方ありません。
頑張ったけど、そうなっちゃったんだから。

基本的な設定は前回公演に似たところがあります。
いや、ちょっと違うかな。でも、とにかく特殊な手法を使った演出であることは間違いありません。
役者さんは全部で13人。
男という役以外は、固定した役はありません。一つの役を何人もの役者さんが切り替えてされたりします。
自然にいつの間にか切り替わることもあれば、ザザザというアナログ式のテレビの映らないチャンネルを切り替える時みたいに、その音と暗転後にパっと切り替わっていたりします。
また、舞台周囲に並べられたマイクを使って、基本的に12人の役者さんは舞台に登場していない時は、歩く、エレベーター、電車、服を脱ぐ・・・など情景や振る舞い全てにわたって言葉で表現します。言葉じゃないのかな。チラシの言葉を借りればノイズ。

ストーリーはよく分かりません。
何かあんまり活気ある生活を送っていない男が、子供を拾って育てて、その子供が大きくなって妊娠して、自分で産むと決めるけど男には捨てられ、どうしようもなくなって子供を捨てて・・・
分かる必要もないのかもしれません。
こういう言葉が連呼されるノイズの中で、発せられていない本当の言葉を感じ取ればいいのかもしれません。主人公である男は実際に全くしゃべりませんので。
それでも、どんなセリフが発せられるかは、そのシーンそれぞれで何か分かるようになっています。
すいません、悪いと思ってるけど仕方ないんです、ありがとう、大丈夫だよ、自分がいてるから、つらかったね、頑張れよ、いい加減にしろ、もう我慢できるか、何で自分がこんな目に、ふざけるな、もう一度やってみよう・・・
なんて言葉が、言ってもいないのに聞こえてきます。

チラシの言葉を借りれば、そういう声にして発せられた言葉の重みと、声にしない言葉、言葉にできない気持ちの重みにどれほどの違いがあるか。
本当は本来、言葉に出来ないものだということなのでしょう。

役者さんもわざとそうしてるんでしょうね。
水色のジャージを着ている人:○○、上が黒下が青のジャージを着ている人:△△みたいに記号のような設定になっています。
キャラの特徴を付けない、言葉もごく日常に流れるノイズ。
そんな中から本当の言葉を感じ取れ。それをこの作品の男が持っているということなのかなと思っています。

毎回、つらい思いさせられるのに、ずっと観続けています。
何か面白い物が隠されているような気がしてならないのです。
それをいじわるして、分からないようにしているに違いないと思っています。
だから、分かるまで観続けようと決めました。
後、10回ぐらい観たら、さすがに分かるでしょう。
それまで、頑張ってご活躍いただかないといけません。
勝ち逃げされたらたまりませんから。

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演劇」カテゴリの記事

コメント

やはり難しかったですか?
割と初歩的なメタフィクションでしたが、メタファーが小劇場ファンの登竜門で、メタフィクションは小劇場マニアへの登竜門と言えます。
私は30年以上の観劇歴があるので、どんな芝居を見ても何かの真似か発展形のように思えず、観劇歴の浅い人が様々な作品に出会って驚いたり感動したりされるのが羨ましくもあります。
ほとんどの小劇場の表現の仕方は、寺山修司が既に実験演劇で発表しているので、かなり新しい発想で作品を創作しないと、新たな演劇作品を生み出すのは本当に難しいのです。
もちろん若手劇団が、寺山修司や天井桟敷を知っている筈もないので、新たな発想で思いついたことも、ほとんどが既に寺山が演ったことで、この作品もその発展形と言えます。
演劇作品を見るだけでなく、演出や表現の解説書を読まれることをお勧めします。
専門書である必要はありません。
一般向けの演劇雑誌で十分ですよ。
例えば、戯曲賞の受賞本などには、解説も載せられているので、内容を理解する助けになります。
本年のOMS戯曲賞は、真夏の會でご覧になった極東退屈道場の『サブウェイ』が受賞しましたので、近く出版されます。

投稿: ツカモトオサム | 2011年12月21日 (水) 04時43分

>ツカモトオサムさん

コメントありがとうございます。

この作品は微妙なところでした。
確かに複雑なメタフィクションでは無いようには感じたのですが、分かったようで、どうも分かっていない感じです。

言葉をノイズのように扱うのはサブウェイ、役が入れ替わったりするのは空の驛舎、変な電子音の後の暗転でシーンが切り替わるのは水の会やクロムモリブデンとかで拝見した手法だなあと思って観ていました。

本は以前から何か読んでおくだけでためになるのではないかと思っていましたが、なかなか行動に移せず。
今回、コメントをいただいたのをきっかけにアマゾンでちょっと購入してみました。
演劇入門:平田オリザ、メタファ思考:瀬戸賢一。
2冊目はちょっと演劇とは違いますけど、メタファーを知るのに面白そうだったので。
少し勉強してみます。

ところで、塚本さんにそんな本を書いていただくのが一番、ありがたいような気がしますが(*^-^)
DVD化されている作品と、塚本さんのブログ解説の詳細版がセットになっていればありがたいんですけどね。

ありがとうございました。

投稿: SAISEI | 2011年12月21日 (水) 14時32分

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