Job【Fling Fish Sausage Club】111025
2011年10月25日 ウィングフィールド
決して簡単な話ではないはず。
テーマが家族になっていると言えども、家族愛とかよりも家族を持って生きる覚悟みたいなものを感じさせる作品。
だから、作品名がJobなんだな。
難しそうな割には、思いのほか集中して観れた。
個性的な役者さんの不思議な演技に笑っていればいいのか、真剣に考えながら観ればいいのか。
自分の経験と照らし合わせて、不安になったり、もっと軽く考えてもいいのかなと安堵したり。
この手の作品は頭の中で色々な気持ちがグルグル回る。
お兄さんとその妻。妻がいきなり家を出て行く。戻ってくるがもう仲は元には戻れない。昔、お兄さんの反対で子供を中絶したことが尾を引いているのか。結婚はして夫婦にはなっても、家族をつくることを拒絶した形。
居候の弟は仕事もろくにせずブラブラした毎日。彼女が妊娠。仕事もしないで結婚なんか出来るのか。ましてや子供なんて。自信を持てない。そんな状態で生まれた子供はどうなるの。幸せなんかになれるわけない。彼女は流産する。家族をつくれなかった形。
弟の幼馴染の女性も妊娠。もうすぐ結婚することになっている。昔は弟と結婚するような気がしていたみたい。でも、あんないい加減な奴だから無理だろうな。振り切って家族をつくる形。
ラジオからは事件の報道が。少年が父親を撲殺。拘束された少年は笑っている。家族を壊した形。
家には犬のペロ。悪魔。全てを見透かしたように飄々と振る舞い、ニコニコしている。
現実的な問題、タイミング、環境などによって、様々な形をとることになった家族の話が並行して描かれる。
特に各々の家族に相関する事象は無い。・・・と思う。
共通点を考えてはみたが、特に見当たらない。
ただ、事件は一つのキーワードにはなっているのだろう。
当日チラシの作家、松永恭昭さんの言葉を借りれば、事件はバーチャル、家族の現実はリアルの情報となる。
多くの情報の上に乗っかかる現実。
メディアから漠然とした形で入り込む、この家族をたやすく壊し、それに笑みを浮かべる少年のバーチャル情報は、子供を産むことへの自信喪失や拒絶につながっているような気がする。
本当は、この少年のもっと現実の情報を理解すれば、そんなことに影響されないかもしれないのに。
最後、家族をつくれなかった弟は、もう犬ではなくなったペロと一緒に虹を見る。
この虹を愛する妻、子供と見れる日が来ればいいな。ずっと見続けるようになればいいな。何も深く考えることはない。
本当はそんな気持ちだけで家族なんてものは作ればいいんじゃないのか。
ぼんやり、虹かあとつぶやく弟の言葉からそんなことを感じた。
話は終始、淡々と、どちらかといえば重い雰囲気で進む。
でも、矛盾する書き方になるが不思議と重苦しさは感じない。
これは役者さんの演技が非常に寄与しているように思う。
大変個性的な方が多い。
弟を演じる濵本直樹さん(DanieLonely)のいい加減な振る舞い、言葉を発する中で、時折、家族を持つことへの葛藤や不安はとてもよく伝わる。
犬のペロは私は絶賛。熊谷みずほさん。犬の愛らしさを見事に表現されながら、何か全部分かっているんじゃないかという小悪魔のような表情はとても魅力的。この作品の人達のように、苦しまされるのだろうが、家で飼いたいぐらいだ。
分かりやすい内容なんだけど、考えるとどんどん奥まで入り込んでしまえるような不思議な作品だった。
難しくせずに、易しい雰囲気を出しながら、話を展開していくところが、とても引き込まれる。
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