フローズン・ビーチ【シバイシマイ】110807
2011年08月07日 インディペンデントシアター1st
この劇団、役者さんはよく客演で拝見しており、非常に魅力的な方々。
でも、昨年の劇団本公演の感想を振り返って見てみると、いま一つ理解できなかったみたい。
(http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/100717-6bf9.html)
今回も少々合わなかったりするのかなと思って観に行きましたが、これが最高。
めちゃくちゃ面白かった。
コメディーの雰囲気を崩さず、シリアスなサスペンスを展開される。
役者さんの掛け合いで笑いを取りながら、個々の魅力たっぷりの演技でぞっとさせたりする。
2時間、話にのめり込みながら楽しく観劇しました。
脚本はケラリーノ・サンドロヴィッチさん。
ブログを書いている今、ネットで調べていますが、すごく有名な方なんですね。しかも日本人なんだ。
それに、この作品、岸田國士戯曲賞を受賞されている。
これを妙な個性的な魅力を持たれ、先日の一人芝居トライアルでも会場を思いっきり沸かせた是常裕美さん(演出の時は篠巳槇さん)が演出されています。
しかも、有名な面白役者さんお二人を迎えており、そりゃあ面白かったのは当たり前か。
舞台はカリブ海と大西洋の間の小さな島のリゾート地の別荘。
1987年。
双子の姉妹(萌・愛)が住んでいるこの別荘に、友達2人がやってくる。
1人は愛の幼馴染、千津。もう1人は千津の高校時代の同級生、市子。
この日は双子の姉妹の母親の命日。
そこに、双子の姉妹の父と後妻、咲恵が予定より早く帰ってくる。
愛はだらだらしていい加減に生きている萌が嫌い。
そして、後妻が母を自殺に追い込んだと思っており、憎んでいる。
千津は愛と深い仲。薬物中毒の仲間でもある。愛に対して自分に無い何かを見出しており、その嫉妬から愛しながらも憎んでいる。
市子は高まった感情を押さえれない精神的な病気。高校時代からちょっとしたことに対する仕返しが度を超しており、何度も問題になっている。その時、いつもそばにいてくれた千津に信頼を寄せている。
咲恵は自由奔放な性格。自分の視覚障害すら自虐的なネタにして笑いに変えてしまうぐらい。結婚はやはり遺産目当て。
こんな人間関係の中で、この年、各々の心の奥底に眠る殺意がひょんなことから現実のものとなる。
その8年後、さらに16年後の同じ日に同じ別荘に集まる各々の姿を描きながら、話は進む。
1987年の事件は、想像できるように双子というトリックを利用。全員に何らかの殺意があるために、ごく自然にこの年の結末へと話が向かう。
8年後の1995年は、その時代背景を描写。この年に実際世間を騒がせた事件を話に絡ませており、かなり、問題的な部分も多い。少々、神がかり的な無理な設定があるが、この事件を持ち出しているので、違和感があまり無い。
さらに16年後、2003年。長きにわたったこの話のフィナーレを綺麗に迎えさせている。
「フニクリ・フニクラ」の音楽にのせながらの、最後のシュールな終わり方は16年という月日を皮肉っているように見え、痛快な気持ちになる。
うまく創るもんだ。
双子は一人二役。
それだけでなく、時代の異なる各々のシーンでは登場人物の性格がかなり変わっている。
このあたりの七変化はさすがの女優さんっぷり。
それに加えて、終始、会話の掛け合いやセリフの中で笑いも取っていかれるのだからすごいものだ。
脚本家の主宰するナイロン100℃という劇団で公演を何回かされているみたい。
その時もやはり今回のように役者さんが力を張りあうぐらいの凄さを見せられていたのかな。
たった4人の役者さん。
性格の異なる双子を切り替えながら、冷静な振る舞いで事件を導いていく萌・愛、片彩眞璃さん。
潜んだ殺意、時代によって相当な変化を見せる千津、仁津真実さん。
天然でありながら、狂気的な行動・表情を時折見せつける市子、ハシグチメグミさん(baghdad cafe)。
自由奔放、悪意のない振る舞いから事件を大きくしながらも平坦に見せる咲恵、嘉納みなこさん(かのうとおっさん)。
4人が個性的な演技を武器にぶつかり合っているような感じで、すっかり魅入ってしまった。表情とかも素晴らしい。
やっぱりここは面白いんだな。
今、座付作家の佐藤真理子さんが次回作を鋭意執筆中とのことです。
早く観たいな。
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