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2011年7月19日 (火)

<DVD>セイ透明ハロー・セイ金色グッバイ【MicroTOMacro】

先日、拝見したサークルおしばいっの作品でふと思い出しました。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2011/07/rebirth110716-d.html
たしか、同じような系統の作品で観ておきたいDVDがあったはず。
それがこれです。

ちょうど、近々シアトリカル應典院の舞台芸術祭で公演もあるので、事前にチェックしておきます。

やっぱり私の好きなタイプの作品でした。

舞台はとある病院。
若年性アルツハイマーの男、アルコール中毒を治療している男、特に何も問題はなさそうな普通っぽい男、白衣を着ている医師、看護師さん2人がいつも集まって楽しく会話をしています。
主人公は医師。
いきなり、ネタばらしをしてしまいますが、この人、本当の医師ではありません。患者。
本当の医師は普通っぽい男です。
こんな人たちが、病院のお楽しみ会で芝居をすることになります。
演目は「走れメロス」。
メロスを待つセリヌンティウス役を医師(偽)がすることになります。

場面は転換して、ある家族のお話。
遊園地で楽しく遊ぶ男の子。優しそうな母と父。
どこにでもある楽しい家族の姿。
ある日、男の子が帰宅すると、母がいません。出ていったみたいです。
この日から父との二人暮らしが始まります。そして、男の子にとって、不幸の始まりでもありました。
学校でもいじめられ、父との仲もぎくしゃくしてうまくいきません。嫌い合っているのではなく、父も子供もどうしていいか分からないような状態。

ある日、父が遊園地に連れていってくれます。
男の子にとっては、幸せな時間です。
閉演時間が近づきます。
閉演5分前、17時55分。男の子が帽子を無くしてしまったので、父が探しに戻ります。
18時には戻ってくる約束をして。
・・・、それっきりでした。

その時以来、男の子の時間は止まります。
孤児院でもうまくいかず、行きついた先が病院。

病院。
芝居の稽古が始まります。
へたくそながら、みんな楽しくやります。
役者が足りないので、新人掃除夫として雇われた初老の男も巻き込まれます。
最後のシーン。メロスが戻ってくる。そして、ハッピーエンド。
セリヌンティウス役の医師(偽)が錯乱します。
こんなことは起こらない。信じていても裏切られるのが現実だと。

若年性アルツハイマーの男やアルコール中毒の男は医師(偽)が大好き。
自分たちがつらい時にいつも声をかけて励ましてくれた。
そんな医師(偽)を助けようと、色々調べた結果、ある事実が判明します。
掃除夫は医師(偽)の父であることを。

自分には父がいない、全て自分が悪いからこうなったと自分の感情を抑え込んでしまっている医師(偽)は、父と再会して、もう一度自分の時を進め始めることができるようになります。

さっとしたあらすじはこんな感じ。
劇中劇の世界と、本来の世界がうまく絡みながら話が進んでいく。
医師(偽)が父を許してハッピーエンドみたいな感じでは終わっていません。
父は病気で先が長くなかったみたいで、ラストシーンでは死を匂わしています。
医師(偽)もさほど変わらず、いつものようにみんなと話す姿です。
ただ、本当にあの日止まった時間が、ようやく動き始めた、これからといった希望を見出させるような終わり方です。

医師(偽)はずっと幻影を見ています。
黒い蝶、時計の妖精みたいな物、そして、あの日時が止まった自分の姿。
自分が抑え込んでいた気持ちの象徴でしょう。それと別れを告げるシーンこそが、一歩踏み出したことを明確にしています。
抑え込みながらも、本当はずっと父を信じ続けていた。それが不安だった。だから、ずっとつらかった。父の姿を見て、信じていた自分にやっと安堵感を得たのかもしれません。
微妙な感情表現を、子供時代を松村里美さん、医師(偽)時代をコーディーさんが演じます。

医師と患者、掃除夫など、トリッキーなところが幾つかありますが、基本的にそれを隠してあっと驚かせるようなことはせず、どちらかというとすぐに気づかせてしまっています。
すごく素直に、話そのものを味わえました。この点が、この作品を優しい感じに仕上げているように思います。
女性作・演の石井テル子さんのお人柄でしょうか。

このパターンの作品は私にとって、どうやら鉄板ですね。
絶対に面白いと感じる。
特にこの作品はおかしな計算で意表をついてやろうとかしていないからいい。
安心して観れるというのは、けっこう観る側にとっては重要な因子です。

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