空と私のあいだ【MONO特別企画】110630
2011年06月30日 アイホール
やっぱすごいなあ、MONOは。
何回か観劇させていただいていますが、いつも斬新。
今回はいつもの脚本、土田英生さんに加え、売込隊ビームの横山拓也さんも加わっており、より一層、ブラックな何かが潜んだ中で、コミカルなシーンがつながっていくという不思議な面白さが味わえる作品でした。
(以下、ネタバレ注意。月曜日まで公演がありますので、終わるまで白字にしておきます)
舞台は喫茶店。
4つのテーブルに分かれており、前面に来たテーブルのシーンが演じられます。
残りのテーブルでも同じように時は進んでおり、ところどころでメインで進む前面テーブルの会話に絡んできたりします。
背景としてツルヒメの塔というものが重要なキーワードになっています。
これが建ってから、原因不明の頭痛から死に至るという現象が多数起こっているのに、あまり重要視されていません。
4つのテーブルの会話の中にも、自然に出てくるこの塔。
でも、ごく普通にある塔としての認識しかないようです。
最初は二組のカップル。
日常、まず使わないであろう言葉(例えば、たゆまずとか)、聞いたこともない比喩表現などを当たり前のように使う女の子。その子の彼氏がイライラしています。
理由は、普通だと通じ合わないはずなのに、なぜか後輩にはそれが完全に通じてしまう。仲を疑う訳ではないけど、どうも納得がいかない模様。
後輩は誤解だと、自分の彼女を連れてきています。
ところが、彼女もこれまで必死に何とか理解しようと頑張ってきたのに、何の努力もなしに普通に通じ合ってしまう女の子の存在に頭にきだします。
そんなおかしな組み合わせの4人が、この話の通じない会話を繰り広げています。
もう、互いのカップルの仲が決裂という時に、外に見えるツルヒメの塔から綺麗な光が。
男と女。
頭痛で体調を悪くして会社を辞めた男。なぜか巨額の退職金をもらったようで、元上司の女性を呼び出しています。
呼び出したのはプロポーズするため。
婚約指輪も購入して、結婚を迫りますが、女性からはいい返事が聞けません。
この女性、部長と不倫をしており、そんな結婚できるような女ではないと言うのです。
でも、男のひたすら純情な思いに負け始め、ここで一度リセットしてまた新しい人生を歩んでもいいかなという気持ちに変わりつつあるようです。
喜ぶ男。でも、頭痛が激しくなったようで頭を抱え込みます。
その時、外に見えるツルヒメの塔から綺麗な光が。
女4人。
ちょっとみんな困った様子。
それぞれ持ち合わせがなく、コーヒー代が払えないのです。
全員、主婦のようで、家族に持ってきてもらえばよさそうなのにそうもいかないようです。
どうも、全員、主人からDVを受けており、それをどうにかしていこうという会のメンバーのようです。
持ち合わせのお金がないことから、各々のDV自慢に話は広がり収拾がつかなくなります。
会の意義でもある、何かを変えるということから、結局、他の客に金を借りるという行動をとることにします。普段から人にお願いをするなど考えもしない主婦たちの冒険です。
隣のテーブルで向かった時、外に見えるツルヒメの塔から綺麗な光が。
ここで次は最後のテーブルかなと思っていたら、そうではありませんでした。
急にこの喫茶店を経営する3兄弟の話。
このシーンだけ、先ほどのテーブルでのシーンと時間軸が異なり、その翌日という設定になっています。
頭痛の男は、結局死んだようです。
主婦たちもお金を借りれず、結局コーヒーがまずいとか言って、逃げたみたいです。
色々と大変だったと振り返る中、長男が弟と妹に言いだします。
経営難なので、誰か一人辞めないといけないと。
一番一生懸命働いている弟、車の運転が唯一できる妹。これを考慮すると、長男が辞めるしかないような話ですが、何と塔の会社からスポンサー代として多額のお金が入ることに。
これで店は安泰。
最後は女子高生3人組。
頭痛が悪化して入院している同級生のために千羽鶴を折る女の子。
出来上がったら、みんなで一緒に見舞いに行こうと他の二人に声をかけます。
なぜか、気まずそうにする二人。
この二人、実は今日、もう見舞いに行ってしまったみたい。入院している子からメールが届いたのです。ということは、千羽鶴を折る子にはメールが来ていない。
黙っているわけにもいかず、本当のことが話されます。
自分が嫌われていると落ち込み、理由を教えてくれとせがみだしたため、腹を割った話が繰り広げられます。
千羽鶴や見舞いのことなど、いつの間にかスタンドプレイをし出すところが敬遠されていると。
今までもずっとそうだったと反省しだす女の子。でも、決して悪意があるわけではなく、ちょっとした掛け違い。それは友達も分かっていること。
やがて、三人はみんなで千羽鶴を折って、三人でまた見舞いに行こうということになります。
ちょっと泣きながら、鶴を折る女の子。笑い顔も少し見えます。
その時、外に見えるツルヒメの塔から綺麗な光が。
話としてはこれだけ。
ツルヒメの塔の真相は分かりません。
ただ、明らかに何かの原因となっている塔に対する扱いが、わざと気づかないふりをしてるんじゃないかと思わすぐらいです。
そんな重大で深刻な事態が起きており、各々が当事者として絡んでいるのに、ごく日常の生活を営んでしまっている雰囲気が普通に出ていて、こわいというか現実的というか。
何もつながらない4つの話。
言葉遊びをいじくったズレを楽しんだり、男の純情にちょっと心ほのめかされたり、DVってこんな心境になるから解決しないんだなとあきれてみたり、若いからこそぶつかる悩みに心痛めたり、色々な感情をもってただ話を聞くだけ。
でも、そこに共通の塔というものが浮かび上がってくる。
設定はもちろん、こういう背景の中で進む話自体も面白く、何とも不思議な作品でした。
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