わんころが揺れ雲をめぐる冒険【プラズマみかん】110713
2011年07月13日 シアトリカル應典院
sapce×drama舞台芸術際の第2弾。
ここは覚えが定かでないのですが、1回どこかで拝見している劇団のはず。
その時の覚えでは、私にとって難しい作品を創る劇団との認識。
第1弾のピンク地底人と同じく、どこまでしっかり観れるものかとちょっと消極的に観劇。
結果は、やっぱり難しかった。でも、まあこれでいいかなと。
もちろんしっかり理解できなかったのはそのとおりなんですが、どこが掴めていないからそうなったということが少し分かった。
よく言う、分からないことが分かってるなら良しという奴です。
漠然とですが、伝わってきたこともたくさんあります。
それはところどころのセリフであったり、全体的なメッセージであったり、何でこの作品を創ったかであったり。
話の内容は、一言で言えば神戸大震災です。
当日チラシによれば、東日本大震災を意識したのではなく、創ると決めてから、それが起こったようです。
震災を魔物と捉えて、それとの向き合いを描いています。
作品名のとおり、犬の視点を絡ましながら、震災の被害者、その被害者と関わった人の震災との向き合った模様をメタファー(最近、覚えたので使ってみたいのです)を組み入れながら話を進めています。
出来の悪い生徒たち。優しい先生。
補習授業の後、いつも連れて行ってくれた裏山。そこで枝に突き刺したマシュマロを焼いて食べる大人の味。
そんな日常が当たり前に続く。
ある日、それが崩れる。
まずは第1ポイント。
マシュマロ。これが捉え切れていない。
作品中では、魔物の大好物。これを食べたから魔物がやってきた。
ごく当たり前の日常、当たり前に食べる物なのに、不条理に魔物がやってきたのか。
大人の食べ方、何か通常と違うことを人がしたから必然的に魔物がやってきたのか。
とろけるような甘さが、惰性的になっている人の生活、それを魔物が突いてきたのか。
どう捉えるべきなのかがはっきりしなかった。
まあ、答えがどこにあるにせよ、漠然と何か感じられはするのだが。
生き残った一人の女生徒は、被害の無かった隣町の学校に引っ越す。
彼女は震災で犬を失っている。
その学校で、震災のレポートをしっかりまとめる生徒、何かをしてあげたい、してあげなくてはと接してくる生徒とお友達になる。
ここは何となく分かる。
被災者と被災しなかった人。
被災者は何を求めるのか。被災しなかった人は何が出来るのか。どういう形で。
これがまだ幼い子供の視点で描かれている。
先生も生き残る。
でも多くの生徒を失った事実は消えない。
夜中に家を出て行っては、野良犬たちを集めて補習授業、マシュマロを食べることを繰り返す。
そんな姿に妻との仲も亀裂が走り始める。
妻もテレビゲームに夢中。
第2ポイント。
後半の話で妻は魔物に食べられ犬に変わる。
いや、元から犬だったのか。前半の先生のセリフから、妻みたいな犬がいることを匂わせていたから。
それがなぜ人の形で話を進めているのかが理解できない。
テレビゲームは現実逃避?
ゲームのキャラクターと戦い続ける妻の姿は、見えない敵との戦い、どこにぶつけていいのか分からない怒りの象徴なのか。
生き残った犬達。
主人を失っている。または、人が生きていくために主人と別れざるを得ない状況になっている。
そんな犬達は魔物をやっつける旅に出る。
今こそお世話になった主人に対する恩返し、そして何より魔物に気付いて教えてあげられなかった罪滅ぼしのために。
でも、そんな思いとは裏腹に保健所への強制連行との戦いが始まる。
第3ポイント。
犬達の最終目的が今一つ理解できない。魔物を倒す。どういう形で?
そもそも犬に何か意味を持たせているのかな。
身近で大事なものだけど捨てる決断もできるもの。
被災という究極な状況での人間の自分本位な行動の正当化の一事例なのか。
保健所への連行は。自分が失ったから他の人も失うべき。結局、守ろうとは人はしないのか。
時は進む。
震災のレポートをまとめた生徒は、今、各地を回って被災のことを語る。
でも壁にぶち当たる。自分が被災者じゃないから。言葉一つ一つに真実の説得力が欠けている。
生き残った生徒とその友達は、犬のための王国を作り始める。
そこでは人と犬が共存できる世界。
被災者なので世間も同調しやすい。瞬く間に発展する。
でも、犬が増えその負担が大きくなる。バランスが崩れ、やがて犬の王国は大量の犠牲犬を出して崩壊する。
第4ポイント。
その前に被災者じゃないから説得力に欠けるというのはよく理解できる。
でも、じゃあどうしたらいいんだろう。
何にでも当てはまる。戦争を経験していない人が語る戦争反対、裕福な人が語る貧困撲滅の言葉、両親に大切に育てられた人がしようとする親のいない子への理解・・・
同じ傷を負うのは無理。じゃあどうしたらいいのか。答えは分からない。
出来上がった犬の王国。
正論で出来上がった王国は綺麗事世界の象徴か。だから、もろいのか。
結局、人に負担がかかって、それが原因となって崩壊する。余裕がなければ所詮できないことなのか。
最後。
犬の王国は崩壊したけど、犬になった先生の妻は王国内で結婚し、子供を授かる。
そのことで正気に戻った先生。
色々な物を失った生き残った生徒は、亡くなった友達の幻影の中でもう自分達に出来なくなった生きることを続けろという言葉を聞く。
第5ポイント。
何か分かるんだけど、はっきりはしない。
子供は希望かな。例え、崩壊しても、やったことで残ったかすかな結果か。これをまた次につなげていかないといけないということか。
そんな希望を少しずつ見つけて手に入れながら、被災の悲しみを癒しているということか。
自らが追い込まれた時に、亡くなった友達のことを思う。死ぬ以上の悲しみはないんだから、頑張らないと。
都合がいいと言えば都合がいい。あの人たちよりはましだから頑張れといって頑張れるかな。自らも被災者の場合と被災していない人の場合でも異なるかもしれない。
と言った感じで、色々と頭をフル回転させたのですが、本質は掴めませんでした。
書いて改めて分かりましたが、ほとんど分からなかったんじゃん。
でも、まあ何か感じ取ってはいるのでいいのです。
ちなみに、舞台は鎖が何個も吊り下げられているだけ。この鎖も多分何かの象徴です。
犬ということもあるのでしょうが、震災への囚われなんかも表しているのかなとか思いながら、劇場を後にしました。
この舞台芸術祭、難しいです。
次回はコレクトエリット。ここも、確か複雑な作品を創るところだったはず。
また悩まされるのかな。
ちなみにその次は激団しろっとそん。若い子たちが多く、きゃっきゃっしてそうな感じがしそうですが、過去公演から推測するに、けっこう深い話を出してこられるはず。ただ、少し、ここらで気を抜きたいから気楽に観れる作品だったらいいなと今から少し期待。
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コメント
触れられたので!コメントいたします。
私も難しいなぁと思いながら、しかし勉強させて参加させてもらってます!
圧倒されちゃって、自分達がどうしたらいいか。
真剣にかんがえながら立ち向かいたいと思います。
是非、二つのエンドをみていただきたいです。
きっとまた好きになっていただける自信はありますので。
またお待ちしています!
投稿: ぽるん | 2011年7月15日 (金) 00時30分
>ぽるんさん
あ~、しろっとそん以外のブログも見てくれてるんだ。
嬉しいな。
space×drama、色々な作品観れて、本当に楽しい。
そこにしろっとそんも加わることでしょう。
自信たっぷり。本当にそうなのか、ご自分を追い込まれてるのか、どちらにせよ本当に立派なことです。
最高の作品を観せてもらえることは鼻から信じて疑っていません。
仕事がどうなるか分かりませんが、今回は他の公演とかぶらないので、一日をまるごとしろっとそんデーにして、両方とも楽しませてもらうつもり。
ブログやツィッターでしか状況は分かりませんが、随分、精力的に頑張られてる模様。
若いといっても無理しないように、元気なお姿を舞台で拝見できますように。
皆さんのご活躍、本当に楽しみにしてますよ。
投稿: SAISEI | 2011年7月16日 (土) 01時26分