鬼の祈り歌【Planet Company】110508
2011年05月08日 インディペンデントシアター1st
衣装も凝っていて、なかなか素敵な典型的な戦記ファンタジーでした。
HPを拝見しましたが、滋賀県中心に活動する若手の劇団のようです。
美しくも切ない物語。
当日チラシの言葉を借りれば、自分の当たり前は必ずしも他人の当たり前にはならない。
生きていく中で、触れ合ってきた出来事や人たちが異なればなおのこと。
互いに当たり前を絶対視していては何も進まない。
ちょっとだけ、他人の当たり前を自分の当たり前にできれば。
価値観なんて言葉、大切だけど自分も含めて他人のものもそう思わないと意味の無いものなのかもしれません。
普段、よく考えるキーワードなんだけど、観終えて、ちょっとそんな気持ちになりました。
舞台は鬼が住むという島。
大陸の大国とこの島は昔から戦争が繰り返され、互いに因縁があるみたい。
大国はこの島を制圧しようと、国王の息子が率いる軍を派遣します。
隊長、上官、そして、幼き頃に自分の村を鬼に壊滅されその復讐だけを誓って生きてきた少年。
島で出会ったのは鬼の歌姫。
やさしく奏でるその歌声は人々の傷を癒すと言われています。
その歌姫、少年とそっくりの顔を持ちます。
これがこの話のポイント。後々、その意味が明かされます。
歌姫を含め、島に住む人たちはみんないい人。
とても、残虐な殺戮行為を繰り返してきたとは思えません。
戦争なんてそんなものなのかもしれません。一方的な見方しかしなければ、殺された側は殺した側を恐れ憎むしかできない。
話し合いで事を解決しようと考え始める大国の皇子。
それに反発する少年。
そんな中、大国の軍の上官が何者かによって殺されます。
その上官は、生涯孤独の身になった少年を弟のように慕い育ててくれた人。
少年の恨み、そし大国の怒りは最高潮に達し、ついに開戦します。
互いに一進一退を繰り返す中、昔、大国と戦争をしたことのある島の老人が真実を語ります。
少年と歌姫に隠された真実。
それを知った両軍の行方は・・・
互いに仲直りしてちゃんちゃんという形では終わりません。
真実を知り、いくら分かり合えても止めることが許されないこともあります。
それに、大国が島を制圧するという目的は、こんなこととは別にまた別の価値観の下に進んでいること。
そのあたりが切ないエンドを迎え、物語を悲しいものにしています。
キャストは6人。
大国軍と島軍の主要な役どころだけでも3対3なので、他の村人やキーとなる人も含めると絶対的な数が足りません。
当然、役を兼ねているのですが、切り替えがとても素晴らしかった。
凝っている衣装変えだけでも大変そうですが、軍と村人などそれこそ考えがまるで違う転換はさすがは役者さんだなと感じます。
そっくりの顔を持つ鬼の歌姫と少年は、実際に双子のようです。
島を守るという重圧の下、優しく人に接してきた美しい姫。それでも心の奥底でそれに悩み逃げ出したい気持ちもずっと持っている。
復讐のために全てを恨み憎んで冷徹にふるまってきた少年。でも、上官の優しさを受け入れるだけの気持ちはずっと持ち続けている。
外面は相反するキャラなのですが、実はどこか同じような苦しみを背負い、それぞれの環境で懸命に生きてきたという感覚が伝わるのはやはり本物だからなのかな。いや、これが役者さんの力なのか。
面白い劇団を見つけました。
大阪で公演される時は、また足を運びたいと思います。
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