« いたずら王子バートラム【ミジンコターボ】110521 | トップページ | DOLLY【ムーンビームマシーン】110522 »

2011年5月22日 (日)

ルルの海【サリngROCK÷大塚雅史】110521

2011年05月21日 シアターぷらっつ江坂

観終えて、今なお振り返って色々と考えてしまうような、心に響く作品でした。
観劇始めたばかりの頃、難しい作品に出会うたびに、もうちょっと感性が磨かれないものかねえとがっくりしていました。
この作品も当時ならよく分かんないやで終わっていたと思いますが、今は何かしっかり心打たれるものや感じるものが自分の中に残っていることだけは分かります。
立派になったなあと自分を褒めながら、帰路につきました。

美しくも隠れた毒を感じてしまうような素敵な作品でした。

感性うんぬんと上記しましたが、それじゃあどんな話だったかしっかり書けと言われても、それは難しい。
残念ながら、観たら分かるんだけどなあというレポートにならない記述しかできません。

一言で書いてしまうと、女子高生が出会った半魚人の心の中を覗いていく話です。

女子高生は普通の子。お父さんにお母さん。学校の先生に仲の良いお友達、そしてちょっぴり気になる男の子。
そんな女子高生はある日、海で半魚人の女の子に出会う。
緑色にウロコ、ベトベトした体。グロテスクそのものの半魚人でしたが、二人はお友達に。
楽しく会話する二人は昔からの友達のようにすら見えます。
お友達から借りた大きな深い水槽で家で飼おうとしますが、当然、両親に反対されます。
明日、海へ返すことになった夜、女子高生は深い水槽の中へと潜ります。

そこは半魚人の心の中。
明るく天真爛漫に振る舞う姿とはかけ離れた影の部分が見えてきます。
女子高生の友達への嫉妬、これまでに受けてきた嫌がらせや裏切りに対する怒り・・・
半魚人は見ないで欲しい、帰ってくれといいながら必死にそんな影の部分を消そうとしますが、積もった感情は決して消えません。
大好きな女子高生に自分の心の奥底を見られた半魚人は失望し、自分を嫌悪しますが、女子高生は影だけではなく、もっと光り輝く部分もあることを伝えます。
そして、自分自身にもそんな相反する心があることを。
例えば、両親に距離を置かれている感じがしたり、気になる男の子の気持ちが自分に向けられていないことに対する複雑な気持ち。
そんな気持ちを消し去ろうとしながら生きている。

と、こんな話です。

実際の舞台は、心の奥底を表す底が見えない水槽や青色の美しい色合いから、海底にうごめく赤いマグマの怒りなど心を抽象的に表現した設定になっています。
蛍光を使って、美しい海の様子を表現したり、激しい踊りで怒りの炎を表したりと、神秘的ともいえる舞台でした。
その中で、素晴らしい感情表現を持った演技で圧倒されたのが女子高生と半魚人。寺下怜見さんと西尾瑠衣さん。現役女子高生らしいです。
明るく輝いたと思ったら、複雑な表情を見せる。
二人の演技に完全に釘づけ状態です。
半魚人の西尾さんはどこかで拝見したことあるなあとずっと思っており、家に帰って調べたら、神戸野外公演のふれんずのヒロインですね。あの時も元気あふれる演技は確かにすごかった。納得。

終演後、アフタートークは作・演のお二人に、ゲストの赤星マサノリさん。
作り手からの解説や、会場からの質疑回答でこの作品の理解度が増したような気がします。
その中で、なかなか難しい話であり、女子高生のお二人が、あの年代で例えば親からどう思われているかとかそんなに深く考えるかみたいな話になりました。
演出家の大塚さんのご意見は、若い頃は無関心みたいな形で深さはなかったけど、歳とともにみたいなことを言われていました。
私もちょっと同調するところがあります。
人にどう思われ、どう思うかを考えるとしんどいことが多いです。若い頃は勢いで日々進んでいけばいいですが、やはり年相応に考えることは大事だと思います。まあ、そんなこと気にしても仕方ないしでは、何も成長しない気がします。そこから、もちろん怒り、嫌悪、劣等感、卑屈さなど色々と嫌な物も生まれるのでしょうが、きっと優しさ、思いやりなんていう大事な物も生まれているような気がします。
そんなことを考えながらトークを聞いていました。
まあ、この作品は人によってだいぶ捉え方が異なるかもしれないですね。

深いテーマの脚本に、それを綺麗に表現した演出、素晴らしい演技、美しい舞台・・・と何拍子もそろった素敵な作品でした。

|

« いたずら王子バートラム【ミジンコターボ】110521 | トップページ | DOLLY【ムーンビームマシーン】110522 »

演劇」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ルルの海【サリngROCK÷大塚雅史】110521:

« いたずら王子バートラム【ミジンコターボ】110521 | トップページ | DOLLY【ムーンビームマシーン】110522 »