...and touch me once again【劇団ぎぶあっぷ】110506
2011年05月06日 自由空間 高津177
初劇場でした。普段よく足を運ぶシアトリカル應典院の近くにこんな劇場があるとは。
小さいけど、なかなかいいところのような気がしますが。
劇団としては3回目。うち1回は劇団土竜とのジョイント公演。
初見がRPGをパロったような作品だったので、コミカル劇団の印象が強いのですが、前回のジョイント公演から少し印象が変わっています。
男女愛や家族愛。愛と言うか、信頼を大切にしたような話になっています。
そういえば、初見の作品もおふざけながらもそんなテーマが盛り込まれていたような気も。
今回の作品など真面目で重い設定なので、話が暗くなりそうですが、これが全くそうならないのはやはり役者さんの力なのかな。
何やら不思議な魅力のある劇団です。
父親を殺してしまった兄弟の話。
物騒な話のようですが、真相が分かれば実は血の絆や男女の信頼を描いている感情を揺さぶるような作品です。
医者の長兄、母親が亡くなった後、みんなの世話をしている長女、まだ頼りない次男。
真相を先に書いてしまうと、次男が父とちょっとしたケンカになり、父が倒れる。打ち所が悪く息をしていない。
見つけた長女が医者の兄に連絡して、事故死にしてもらう。
兄弟は葬式後もこのことが頭から離れない。特に次男は何も口にできないぐらいまで焦燥している。
次男は諸事情で他の兄弟と血がつながっていない。
長兄は母親のことを思い、次男に微妙な感情を持って生きてきている。器用な方ではないみたいで、感情をうまく表現できず、冷徹に見えるのも災いしているみたい。
長女はみんなの世話をしなくてはいけず、しかもこんなことになったので、プロポーズしてくれた男に気を許すことができない。
父は亡くなった後、姿が見えない幽霊としてこんな兄弟たちの様子を見ている。
成仏させようと父に付き添う死神。
幽体離脱して幽霊や死神の姿を見ることができ、間をつなぐ女性。
奥さんを見守るために成仏せず地縛霊になった隣の家の主人。
長い入院暮らしで外の世界をほとんど見ることが無く亡くなった女性。長兄の患者だったみたい。
こんな人たちが兄弟たちの行動を見ながら、救われる方向へ話が進むように苦労する。
死んで初めて気づいた子供たちの気持ちを深く受け止める父。
血のつながりが無くともどこかで結ばれている兄弟たち。
自分のことを信頼して全てを打ち明けて欲しいと願う長女の彼氏。
奥さんを見守るために地縛霊になったはいいが、奥さんは死後すぐに成仏してしまった地縛霊。
いいかげんな医者だったが、患者として大切に自分のことを思ってくれていることを理解している女性。
様々な形での愛・信頼が交差しながら話は進んでいく。
最後、父がみんなの力を借りて兄弟たちに語りかける。
全てを救うために。
登場人物はそう多くはないのですが、人物相関がけっこう複雑で書きにくいです。
要はみんなつながっているなあと思わせるような形になっています。
そして、みんなそれぞれの形で人を愛し、信じて生きてきたのだろうと思わせるエピソードが散りばめられています。
ハッピーエンドではありますが、まだまだ解決しきれていない問題もぼかして終わります。
死んでしまった父、残された兄弟、ともにこれまでよりも深い絆が得られたのでしょうが、その代償が大きいのは事実。
その代償を少しでも集中させようと自己犠牲に長兄が走る形でエンドとなります。
理路整然、冷静沈着に振る舞い、感情がどこか冷徹な印象を与える長兄。
全てを知っており、どういう形でこの事件を決着させればいいのかを一番考えていたようです。
この長兄役をされていた松永泰明さんが一番目を引いたかな。
作・演出もこの方みたいです。
同調したり、反発したりするような言葉・行動がたくさんあり、観終えて色々と考えれる作品でした。
ここは劇団としても面白いし、出演されている役者さんが個性的で魅力的。
次回公演や客演にも注目です。
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