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2011年5月29日 (日)

ソノハコニワ【10デシリットル】110528

2011年05月28日 芸術創造館

これは心苦しい作品。
人間関係をテーマにしていますが、これまで経験したことのあるシーンが数多く存在する。
その時のことを思い出したり、今の自分と照らし合わしたりして、心穏やかに観れない。
それだけ、リアルな人間が舞台で演じられているからなのでしょうが。

観終えてじっくり考える。
いや、観劇中もちょっと考え込んで、幾つかのシーンが飛んでしまいました。

温かい終わり方なのですが、人生っていいなあというより、生きるのって難しいよなと改めて感じる気持ちの方が大きい。
ただ、決してネガティブになるわけではなく、前を向いたからこそ、そう感じるような気がします。

舞台はとあるアパート。
そんなアパートでわずかの期間だったけど過ごした学生さんが当時を回想するような形で話が進みます。

つい最近父が亡くなり、後を継いだ息子さんが経営しています。
住人の食事を含めて色々な世話をしてくれる優しい女性もおり、みんなにとってとても居心地のいい空間のようです。
住人は、元々は学生寮だったこともあって、今でもその大学の学生さんが多く住んでいます。
そして、今は社会人として立派に活躍している元住人も時々遊びに来るようです。

自分の目指していこうとしている道。学生さんだからまだそれが明確でない。まあ、学生に限らずそうかもしれませんが。
不安の中で生きている時間。自分を振り返ったり、他人と比較してみたり。自分を強く信じてみたり、自分に疑いを持ったり。他人を素直に受け入れたり、理由もなく拒絶したり。
自分の生き方は当然、自分で決める。もちろん、他人の生き方は他人が決める。自分が関わることではない。
でも、自分だけで生きているわけではない。一人で生きて行こうと思っても、やっぱり一人では生きていけない。いや、いかない。人は人を求める。
ここのアパートのように、互いに干渉し合うような空間を求め、そこに心地よさを人は感じる。同時に通じ合わないもどかしさや失望を感じながらも。
と、こんな気持ちになるような会話のやり取りが繰り広げられていました。

同時に進行する、互いにぎくしゃくしてつながらなくなってしまった父と娘のエピソードが、人が持つ思いやりや絆の強さを確認させてくれます。どんなに通じ合わなくても、やっぱり人と人って出会った以上、何かの絆があるんだよみたいな。

話としては最後、アパートは取り壊されることになります。
四十九日が過ぎ、父の遺言状が明らかになったからです。
そこには、アパートを取り壊すか、嫌なら住人の面倒を見てくれている女性と結婚するかの選択が迫られていました。
どちらの選択も、何もしなくともこの心地よい空間で生きていくことができる息子にとって、新しい道へ進むための背中を押すものです。
同時に住人にとってもそうかもしれません。
楽しい時間・空間にずっとはいられない。無理矢理にでも後押しされることも大事なことかもしれません。その結果、きっとまた新しい素晴らしい自分の道を切り開くでしょうから。

結婚という選択肢もありましたが、息子は取り壊しを選択します。
何もないさらの自分がまた歩んでいく。そして、今よりももっと素敵な道を歩いていく。そんな姿を見せたかったからのようです。その女性に。

回想はここで終わり。
今日は久しぶりにそんな昔のアパートの人達と会う日のようです。
本当に新しい道を見つけた人、相変わらず頑張っているけどさほど変わらない人、ちょっぴり心の変化が芽生えてこれからまた自分の道が見つかりそうな人・・・。
人生の一時を過ごしたアパートでの巡り合いが、人生の大切な時間だったことを改めて感じる日になることでしょう。

自分の感想も交えてしまったので、少しニュアンスがおかしくなっているところもありますが、あらすじはこんな感じ。
同調する考えや、いや、おかしいよそれはという考えがあったり、これ同じ経験したことあるわとか、この決断は強いと感動したり、少々気持ちが落ち着いた状態では観れませんでした。
心がざわざわした感じでの観劇は実はあまり好きではない。何かつらい気持ちになるから。
まあ、たまにはいいでしょう。楽しいおかしいだけの作品ばかり観てても、それはそれで味気ありませんから。

心に訴えかけてくる面白い作品だと思います。
失礼な書き方ですが、それほど目を引く役者さんがいない。個性的なキャラ設定はあるのですが、ごく普通にいそうな人でよくある考えを持った人ばかり。
話の展開が常識的というか。
それだけに、やたらリアル感があり、心に迫るものがあるのかもしれません。

次回は冬ぐらいに公演があるようです。
同系統の作品だったら、自分のバイオリズムの上下によってはつらいかもしれないなあ。
と、思いながらも期待しています。

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