JACK-MOMENT 宴のあと【バンタムクラスステージ】110214

2011年02月14日　芸術創造館

前作のとばずがたりのマリアでだいたいの雰囲気はつかんでいたので、楽しみにしていた。

歴史的な時代背景の中に生きた人間の悲哀が舞台からあふれるように伝わってきて、心が完全に芝居に奪われてしまうようなすごく力強い作品をされるところとして認識しています。

今回も全く同じ。
難しそうな話ですが、ストーリーがしっかりしているのか、分かりやすい。時間が気にならず、あっという間に観終えた感じ。
シーンの切り替わりが、映像作品のようであり、多くの方もよく書かれているが、映画を見ているような印象を本当に受ける。

開演前に講談師、旭堂南陽さんが、作品の時代背景を簡潔に述べる。
後になって考えると、これが作品へと入りやすくしている。

時代は1960年代のシカゴ。マフィアが街の全てを支配している。

会計士ジャック。婚約者との結婚を控え、幸せ絶頂。
そして、ひょんなことから亡くなった母親の残した多額の資産が入り込むことになる。

ところが、母親はマフィアのボスの愛人。
そんな人の残した資産をおいそれとジャックにマフィアが渡すわけがない。

ジャックはマフィアに誘拐され、拷問を受ける。
でも、資産は貸金庫の中。この扉は1年間開かない。
仕方なくジャックは解放。1年後にマフィアは資産を全ていただくことになる。

ここからジャックの抵抗が始まる。
ジャックの誘拐実行犯。愛する女性のためにお金を必要としている。
時計屋職人。父がすさんでしまい、ただ黙々と働いている。
元盗み屋の主人。スーパーで頼りないながらカタギとして働いている。そこの女性といずれ一緒になりたいみたい。
若者3人組。ボクサーくずれと才能があると見込んだ純粋な少年。
そんな仲間たちとともに貸金庫のある銀行を襲い、見事に資産略奪に成功。

一方、マフィア。
ジャックの父親でもあるマフィアのボスは、一人の部下の姉にご執心。
それを利用して、ボスの座に付こうとする部下。

ジャック達は、盗んだ資産はそのままでは使えないのでマネーロンダリングをするために、ある男と接触。
でも、そこにはすでにマフィアの手が入っていた。
マフィアのアジトに連れて行かれるジャック達。

そこでボスはジャックを見て、唯一愛した女性、ジャックの母親を思い、ジャックにすべての座を渡すことを決意する。部下の姉を射殺。そして、自分も射殺される。

数奇な運命の中で、ジャック達は遂にマフィアの頂点に登りつめ、すべての権力を手に入れる。

勝者。でもその時間は長く続かない。
仲間たちの間での不調和。そこをマフィアの部下につかれる。

裏切りにつぐ裏切り。
最後の勝者は・・・。そしてジャックは・・・。

流れはこんな感じ。
後半はまあ裏切りだらけで、人が死にまくります。
何て愚かな人たちの集まり。勝者ですら何かに操られているようにしか見れず、その笑いも渇いたものに聞こえます。

時計屋職人が、時折、話の流れを語ります。
時計の秒針に例え、1周回った後は、次はまた別の人の人生と。
その言葉のまま、別の人の人生が始まるけど、きっとおなじことを繰り返す。
ずっと回り続けてしまうような悲哀、絶望を感じさせる話になっています。

舞台セットも簡単な作りで、全て部屋のシーンですが、様々な場所へと切り替わります。
暗転だけで、スパッとシーンが切り替わるので、本当に映像を見ているような感覚に陥ります。

前回もそうでしたが、男優さんの迫力がすさまじい。
拷問などの暴力シーンは息をのみます。福地教光さんが、うまいんだよなあ。前回は牧師さんだったかな。

やっぱりちょっと独特の雰囲気があり、とっつきにくい印象を受けがちなのですが、いざ観劇するととてもすんなり色々な物が入ってくる不思議な劇団です。
次回作も期待。