レス-懲りない生き方-【美津乃あわ2人芝居】110122
2011年01月22日 ABCホール
まあ、一言でいえばも美津乃あわ最高といったところでしょうか。
女優としてのあまりの力に圧倒されます。
恐ろしいまでに舞台に引き込まれるという経験をしました。
ストーリー的にはちょっと違うけどゴーストみたいな感じでしょうか。
ある女性が失った男の幻影をしっかり断ち切って力強く生きていく姿までを見せるような話です。
切なくも女性の強さ、逆に弱さも含めて感じさせてくれるような作品でした。
本当のところは男視点なので理解できていないとは思いますが、そう感じました。
話は大きく5章に分かれています。
最初は美津乃あわさん扮する女優とその旦那の話。舞台は部屋。
旦那も男優として活躍していたようですが、今はすっかり逆転してひもみたいになっているようです。
浮気は当たり前。作品中にも出てくる「釣った魚にえさはあげない」ということを地でやっているような男。
当然、ケンカは絶えず、出ていけということになります。
出ていく男。でもすぐ戻ってくる。女性もそれを望んでおり、戻ってきて安心みたいなことを繰り返している様が見せられます。
旦那は藤元英樹さん。多分、初見ですが、非常にひもっぽい感じを分かりやすく演じられていました。いい加減さと優しさをうまく同居させているような感じ。
女優と幼馴染の女性記者。舞台はホテルの部屋。
記者は夫婦ともどもよく知っているようで、女性の今の状況も把握しているようです。
だから、心配はしているけど、いい加減に踏ん切りつけないととアドバイスしています。
記者は宮川サキさん。お二人とも関西を代表する女優さんですので、掛け合いはお見事でした。
ニューハーフの宝石商のお店。
ストレス解消に衝動買いをしまくる女優。
宝石商の人も状況をよく知っているみたい。いい加減にしなさいよと制しながらも、相談にのっています。
自分が選んで仕入れた大切な宝石をいいかげんな気持ちで買われたくないと売ってくれないことに。
でも、一つだけ許してもらいます。旦那と一緒に買った思い出の指輪。
宝石商が荒木勇貴さん。この方も初見だと思いますが、すごい貫録でした。本当のニューハーフなのかな。ぴったりはまってるし、言うことも中性的な観点に立っているなあと感じます。
このあたりで私はようやく気付いたのですが、旦那はもう亡くなっているようです。もっと早く気付く方もいらっしゃったでしょう。そう言われればというところが、最初、第2章と転がっていました。
第4章は女優の部屋。
頼りなさそうなマネージャーがいます。
無断欠勤した女優に困りますと嘆いています。
ダメマネージャーなのに雇って大事にしてくれていることへの恩をすごく感じており、女優のことを心配しています。恩だけでは、ないのでしょうが。そこは隠しているようです。いや、隠さざるを得ない状況のようです。
女優はいまだ旦那が家に帰ってきて、食事の支度をしないといけないとか言っています。
ケンカをして家を飛び出した旦那。そこで事故で亡くなった。その事実を分かっていながらも、いまだ認められず、幻影とともに生活する女優。
でも、マネージャーの必死の思い、それとこれまでの友人たちの思いやりに少しずつ変化が訪れているようではあります。
マネージャーから指輪が渡されます。
思い出の指輪。二人で一緒に買ったのに、旦那はすぐに無くしたと言っていたもの。
事故の時に現場に駆け付けたマネージャーは知っていたようです。
旦那は最後にこれを握りしめて力絶えていました。
男優なので指輪をつけたり外したりする機会が多いので、無くさないようにずっとポケットに入れていたそうです。
マネージャーは行澤孝さん。私の好きな男優さんです。頼りなくも優しい役どころはこの方の出演作品で何回も観ているもの。いつもどおりの見事な演技でした。
エピローグ。
女優と旦那。
部屋でいつものように、痴話ケンカをしています。
やがて、お別れの時間がきます。
何かをしっかりふっきった女優の下にもう旦那はいる必要がなくなりました。
最後に抱き合い、朝を迎えます。
机の上に指輪が残っています。
それを手に取る女優の姿は、とても輝いています。
心理描写中心の作品なので文字でのあらすじは伝わりにくいと思いますが、綺麗な作品でした。
単に切なく悲しい作品になっていないのは、役者さんの魅力が作品中にたくさん出ているからでしょう。
切なくも、不思議と元気が湧いてくるような話でした。
まあ、最初に書いたとおり、とにかく美津乃あわ、すごいわに尽きる作品です。
この感想記事とは全く関係ないですが、今、この記事は力を振り絞って書いています。
後から自分で読み返した時に、この時、こうだったなあと思い出したいのでそれを記しておきます。
レス。無くすみたいな意味合いでしょうか。無くすんだからいいことでは多分ない。
でも、無くすのはつらいけど、今その時にそうしないといけないものって出てきますね。
それはきっとレスするのがいいのだと思います。
この作品の女優さんはレスするきっかけに指輪というものを見つけられた。それは最高に幸せなことだと思います。時間の経過に頼ってレスしないですんだのですから。
今、そんな指輪を探しているところです。元からそんなものは無いのかもしれないですが。
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