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2010年12月22日 (水)

kisses【リリパットアーミーⅡ】101221

2010年12月21日 HEP HALL

久しぶりの観劇。と言っても先週末観なかっただけだが。

今週はいっぱい観たい劇団・作品があり、かなり迷ったが、クリスマス、キスがテーマの恋物語であるこの作品を選択。

とっても素敵ないいお話のオムニバス。
心穏やかになって劇場を去る。

リリパットアーミーという関西トップクラスの劇団に多数の他劇団で活躍される名優さんを揃えた今回の公演。
素晴らしいという感想を持てないわけがない。

(以下、ネタバレ注意。公演は23日まで続きます。)

冒頭から小説家とその妻のキスシーンで始まるように、全ての話に作品名のまま、キスが盛り込まれる。

最初は田舎の居酒屋での話。
いい歳して、いまだ結婚できない3人の村の男と東京から最近やってきた既婚の男が居酒屋で集まっている。定例の嫁を探す会を開いているようだ。マスターは妻を亡くしている。看板娘は30歳になる女性。若い子がみんな都会に出ていく中、残っているこの女性は村のアイドルだ。
3人の村の男はこの女性のことが好き。毎年、クリスマスにはこの居酒屋でマスター、女性と一緒に飲むのを楽しみにしている。
ところが、今年は女性はそれに参加できないという。どうもどこかの男とデートらしい。
デート相手を詮索する男たちに対して、女性が挙げた名前は東京から来た男。いつまでも自分の気持ちに気づいてくれない男に対して気を引かせようとOKしたみたい。
女性が本当に好きな男性はマスター。これまでも、店にいれば会えるし、クリスマスも一緒に過ごせる。そんな気持ちでずっとこの店で働いてきたようだ。そんな気持ちにマスターも気づいてはいる。
最近、一緒に妻の墓参りに行ったらしい。男はこれは亡き妻への新しい出会いへの報告のつもり。でも、女性は気持ちを否定されたと思っている。
女性が店を出ていく。
マスターは追いかけない。他の男たちに追いかけろと言われる。
マスターは東京の男とデートをOKしたとか、自分にはそれだけの魅力が無いとかちょっと卑屈になって意地を張っている。無理矢理外に連れ出し、追いかけさせる。
女性にマスターが追いつく。言葉はいらない。キス・・・

小説家の話。自らが書いた小説の内容を語りながら、話を進行させるようなパターン。
小説家と女性編集者。編集者はいわばオールドミスのような仕事に厳しく、男など相手にしないようなタイプ。
そんな編集者が締め切りを守らせるために小説家の家に泊まる。
書きにくい小説家は編集者を出ていかせるために、わざと愛を思わせるような言葉をはき、キスをする。
全く動じない編集者。このことを題材にもっといい小説を書けと行って去る。
時が経って、有名になった小説家。自分を育ててくれた編集者に印税でバッグをプレゼントする。
メールでただ「ありがとう」の返事だけもらう。バッグはいつも身に着けてくれているみたい。
今でも、そのありがとうの中に入っている気持ちを思い起こしながら、そのメールをたまに見る小説家。

未来の話。日本人を収容するステーションにやってくる紙芝居屋ならぬ、テレビジョン屋。今は失われた昔の映像を違法に子供たちに見せている。
キスシーンに興味を持つ女の子。不法移住者の子供でキスなどしたことが無い。
そんな子にキスをなぜするのかを問うテレビジョン屋。口、頬、額、甲、胸、舌・・・
目を閉じて黙ってするキス。その奥に今は失われた緑の映像がよみがえる。
取り締まりの警察にテレビジョン屋は見つかる。叩きのめされて、遺体が道に転がる。
その遺体にキスをする女の子。口、頬・・・
女の子が目を閉じる。失われた映像がよみがえってくる。

小説家の話。
ある日出会った、謎めいた女。困っているところを少し手伝っただけだが、その時のありがとうと言った笑顔に惹かれる。
いつしか二人は親しくなる。
女性からイタリア旅行に誘われる。女性は海外の仕事が多いので、旅行のスケジュールは全てお任せ。
泊まる部屋にはダブルベッド。
どうしたらいいのか悩む男を見て、女性は抱かなくても構わない、そう考えてくれたことへのありがとうを伝える。近づきあう二人はキスをして、・・・
それからしばらく一緒に色々と旅行する二人。
ある日、女性は一人でアメリカに行くと言ったきり戻ってこない。
不思議と未練は無い。ほんのひと時のありがとうの至福の時間を思い起こす。
単なる遊びだったのか。ありがとうも彼女の思わせぶりにさせるちょっとしたテクニックだったのか。
言葉は大切。でも、だからこそ、真実がその言葉に雲隠れすることがある。

姉と二人の弟の話。
小さい頃から仲良し。3人で力を合わせれば何でもできる。
姉はいつか結婚する。弟たちはその時おめでとうと言う。でも、その時は同時にお別れの時でもある。
そんなことを語り合っていた小さい頃。
時は進み、姉と一人の男が何やらしている。どうも結婚式に参列するみたい。
様子を伺う弟たち。
結婚式に参列する。場所は前3列目。讃美歌を歌う。満面の笑みで拍手する。
牧師の言葉にも耳を傾ける。
誓いの言葉。新郎が「誓います」。新婦が・・・
この時、さっそうと男は飛び出す。止めにくる親族は姉が抑える。男は叫ぶ。「誓わさせません」
新婦をさらう。用意した軽トラで逃げる。
こんな計画を二人は立てているみたいだ。
弟たちも姉のために手伝う決断をする。気持ちは固まった。
でも、どうやらこれは妄想芝居だったみたい。男の気持ちに踏ん切りをつけるために姉が妄想にお付き合いしていただけ。
好きだった新婦への未練を断ち切り、結婚式で素直におめでとうと言えるようになったと姉に感謝する男。
こんなバカげたことに付き合う姉の気持ちには全然気づいていない。弟たちはそれを分からせたいと思う。
さらに時が進む。
結婚式。もちろん、姉とその男の。参列する弟たち。おめでとう。その言葉を最後に弟たちは約束どおり去る。
誓いのキス。待てと言って入ってくる弟たち。新婦である姉を壇上から降ろし、弟二人は両側から頬にキスをする。

小説家の話。
同棲を始めようとしている二人。
納得し合って、いやむしろ女性側からの提案なのに、直前になって、本当にいいのかと女性が言い出す。
お互いのことを知るために、一緒に住んで今まで見えていなかった部分も分かり合おうという男に対して、女性はニコリとありがとう。キス。
いざ住み始めると、女性は理屈っぽい。何かにつけて、理屈をこねて共同生活は大変。男は我慢。
でも、先に根をあげたのは女性。置き手紙をして出ていく。
安堵感とともに虚脱する男性。

ラストも小説家の話。でも、これまでの自らが書いた小説ではなく、本当の小説家の話。
ちょっとふてくされた感じで男に話しかける女性。
これまでの話の題材になっている女性。
もう、そろそろ、このありがとうの女シリーズは辞めたらという女性に対し、自分はずっとあなたのことを書き続けたいと言う小説家。
嬉しそうにありがとうと言う女性。
キス。

ちょっとあやふやなところがあるけど、だいたいこんなあらすじのオムニバス。

ありがとうという言葉が好きで、こんな感じの恋愛話が好きな私としては、非常に魅力的な作品だった。
しかも、名役者さんたちが、それを単なる恋愛話にしないで、笑いを盛り込んだ楽しかったり、切なかったりの多彩な話にしていた。

私生活で少し痛んだ心の薬にはなっただろう。

何かは分からないが、観る前と後で心が変化している。そんな素晴らしい作品だった。

ところで、全く関係ないが、観終えた帰り道、あることをしてみようとふと思った。何でしたくなったかのはよく分からないが、したくなったんだからしょうがない。
このブログを見ているある男は分かってくれるだろう。この男から借りた小説でしていることだから。

腕時計の針を5分遅らせる。
0:00を迎える。その時、ある人のことを思う。もうよくは分からない。ただただ、ありがとうと思ってみる。
0:05。もう、考えない。自分の時間に戻る。
ただそれだけ。

ちなみにこの小説ではこれをずっと続ける。1日の終わり、自分の中だけで得した5分をその人のために使い続ける。
私はすぐに針を戻した。
理由は二つ。
一つはそんな冷静な時間だけを使って思うといい方向だけへのひずみが出てしまう。悪く思うのも、思いの一つだ。
二つ目は簡単。
社会生活に支障が出るからだ。少なくとも分単位で動かなくてはいけない私たちに、時間を遅らせて生活するほど現実は甘くない。

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