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2010年11月15日 (月)

八百万MAKE神【劇団ABCD】101113

2010年11月13日 一心寺シアター倶楽

まあ、これだけ個性豊かな役者さんが集まったものだ。

作品名のとおり、神をMAKEするという奇跡を起こすような話だが、私にしてみれば、こんな役者さん達がこれだけ集まっていることの方がよっぽど奇跡だ。

訳の分からない設定、個性的な役者さん達が各々笑いをしっかりとるようなコメディータッチで話は進むが、作品の内容自体は非常に考えさせられるような真面目なもの。

最後の終わり方が尻切れとんぼで残念だなと思ったのだが、本当のラストに映像でこの作品のキーワードになる手紙の内容が映し出され、それで納得。
とてもうまい終わり方。
大阪府立大学卒業生の劇団らしいが、さすが長年の演劇経験を積んだプロ達。

舞台はある館の密室。

「不平等・不公平を作った神への批判、そして神様を作って私を助けろ」という手紙を受け取って、集まってきた人達が閉じ込められている。
手紙の最後の一行には、各々が館へ行く気になりそうな文章がそれぞれ書かれている。1人だけ破れてしまって分からないが。

9人の天才と2人の凡人。
文、絵、運動、音楽、笑い、演技、ダンス、科学、喧嘩。天才はそれぞれ特性を持つ。天才というより、変人に近いぐらいのある才能だけが卓越した人達。
凡人は男と女。2人は同級生。偶然、出会う。

独特の感性を持つ天才達。密室から脱出するには、とにかく神様を作ることだが、なかなかまとまらず、ドタバタが起こる。このあたりは終始笑いが絶えない時間帯。

部屋にはその特性を封じ込めたヤオヨロズの石。
これを全て手に入れたものが万能の神になれるという結論にたどりつく。
奪い合いを始める天才達。
3枚のカーテンで役者が消えたり出てきたりする演出で館の中を走り回っている雰囲気を作り出している。

やがて、この計画の真相が明らかになっていく。
手紙の送り主は凡人の女。その母親が天才の中の1人。
何をやっても限界があり、母親のように優れた才能を持たない自分に自信の無い女と才能が無いことをかわいそうに思う母親が仕組んだ計画だった。
このヤオヨロズの石を使って、神を作るのではなく、みんなに万能の力を持たせて不平等を無くすという考え。

母親は能力至上主義。才能を持たない者はダメという極端な考え。だから、自分の娘を哀れに思い、そのことに関しては自分を恥じている。
女は才能を求めているが、無いからと言ってそれがダメなことなのかは疑視している。いや、本当は才能よりも、それが無いことを受け入れて自信を持った生き方をしたいと思っている。
この計画がおかしいことが頭のどこかにあって、それを潰したかったのだろう。

その救いの手として呼んだのが、かつての同級生の男。
学生時代から人一倍頑張っているのに周囲から認められない人。そんな生き方に疑問を感じずにずっと一生懸命頑張り続ける男。
そんな人にきっと自分の考えを改めさせてもらおうとしたようだ。

思惑通り、彼の強い気持ちを聞くことによって、この計画は潰れる。

女が男に当てた手紙の最後の一行。破れたその部分の文章がラストに映し出される。

面白い設定で、うまいこと考えるなといった感じ。

とても楽しく観劇できた。

目を引いた役者さんは天才陣はすごいキャラを作っているので、全員に目がいくのは当たり前。
それぞれ、自分の思い描いた天才(変人)の姿を演じられていた。
対照的だからか、凡人の方が演技という点では魅力を感じてしまう。下山和絋さんに野中千恵子さん。
本当にノーマル。その中で、不器用ながらも真面目に一生懸命頑張りそうな男と自信が無く前に進めていない女の雰囲気が非常に出ていた。

社会人劇団なのかな。
多分、忙しいのだろうからなかなか公演できないのかな。
今回も特別公演ということみたいだが、また観てみたい気になる劇団だ。

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