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2010年11月 2日 (火)

ジャン.ジェンキンスの椅子【ムーンビームマシーン】101031

2010年10月31日 インディペンデントシアター2nd

これで今年184本目。初観劇以来、338本目になりました。

どうして、こんな中途半端な数字なのに書いたかというと、この中でどうしてこんなにすごいのに小劇場と呼ばれるところでやってるんだろうと思うほど感銘を受けた作品が幾つあったか気になったので。

この作品はその中に入る一つでした。

LINX'S01でこの作品の20分版は拝見しており、とてもいいお話だったので、作品自体はすごくハードルを上げて観劇。
前作ドロテアのヒツギでオープニングからの圧倒感や音響・照明など舞台の綺麗さも引き続き維持してくれていればいいなあと思っていましたが、これが予想以上。素晴らしいの一言。

舞台は見世物小屋、エルザの館。

頼もしく優しいエルザの下に、訳ありの人たちが集まって日々ショーをしています。
綺麗な踊り子とそのコンビの兄弟。言葉が話せない女性マジシャン。調理人。
兄弟の兄は少々気が荒いけど男気のあるムードメーカー。踊り子にほの字。踊り子の方はあまり相手にしてないみたい。弟は気が弱く、兄を崇拝。調理人は女性マジシャンを守ってあげたいと思ってるみたい。
そんな人間関係。
小屋の者だけでなく、街の花屋の娘ジェシカや元気のいい新聞配達なども集います。
ショーには財閥の息子とその妹が毎日来ています。息子はジェシカを嫁にもらいたいみたい。

そんなある日のショー。
ナイフを持った男が舞台にいきなりさまよって現れ、倒れます。

男はジャン。紫の鳥を追っているとのこと。

この街では、クーガの風というものが突如吹き、それにあたると体が木になって死んでしまうという奇病がはやっています。ジャンの父もそれが原因で亡くなりました。エルザや小屋の兄弟、マジシャンも同じような経験をしています。
どうもその原因が紫の鳥と呼ばれる男のようです。

街には体半分が木になってしまった薬師がいます。うわさでは、昔、この病気になった彼氏を救うために紫の鳥に近づき、身代わりを訴えたがそれが失敗して彼は死に、自分もそんな姿になったとか。

ジャンはとりあえず、エルザに拾われ小屋に住むようになります。そして、椅子を使った見事なダンスでショーの人気者になります。
それとともに互いに惹かれ合うようにジェシカとの仲も発展していきます。

どうして自分の父が選ばれたのかという理不尽な気持ちが同じような境遇の人たちと過ごす中で和らぎ、ジャンの復讐の気持ちも少しおさまっていきます。ジェシカや他の人達とのほんの小さな幸せな小屋生活が始まります。でも、楽しい日々は長く続きませんでした。
クーガの風がまたやってきました。怯える小屋や街の人達。最初の犠牲は兄弟の兄。
気弱な弟や小屋の人達を気遣ってずっと黙っていましたが、実はずっと気にかけていた踊り子には気づかれてしまいました。どうすることもできません。死を迎えることに。

小屋の中に暗いものが立ち込めます。そして、さらに不幸な出来事が。ジャンも発症します。
自らの運命を呪うジャン。でも、死の覚悟を決めます。最後まで舞台にあがって踊るジャン。死はどんどん近づいてきます。

一方、ジェシカはジャンの発症以来、小屋には顔を出さなくなりました。噂が伝わります。かねてから求愛されていた財閥の息子と結婚して、隣街に移り住む。そして、もう2度とこの街には戻ってこない。

この噂を聞いてジャンは安心します。最後まで自分を看取るよりも幸せな生活を選んでくれたと。

でも、実際は違いました。
ジェシカは薬師のところに行っていました。そして、身代わりの方法を聞き出すのです。
反対する薬師を強い意志で説得し、身代わりになる決意をしたのです。
これを知る者は2人だけ。1人は当然、薬師。もう1人は財閥の息子です。
このことをジャンに知られないように、財閥の息子と結婚して街には戻らないようにしたのです。このことを財閥の息子も受け入れて、ジェシカの最期は自分が看取る決意をしたようです。彼もジェシカに本当の愛を与えた男でした。

ジャンは治ります。死を覚悟したのに、こんなことになる複雑な思いはあるものの、生きる道を選びます。

やがて、薬師がジャンに綺麗な木を持ってきます。ジャンがショーに使う椅子の取っ手にぴったりはまる木を。
その木は美しく、ジャンを見守るように輝いています。

途中はしょりましたが、だいたいの流れはこんな感じ。

最後にエピローグで踊り子やマジシャン、財閥の息子などのちょっとしたその後が描かれます。これが、哀しみを少し和らげるのでよかった。

男のロマン、女の覚悟。急に何だという感じでしょうが、最近、自分の中ではやっている言葉。とあるショットバーのバーテンダーとお友達の言葉を足し合わせた言葉です。
この作品にはエルザやジェシカ、女の覚悟が詰まっている。
それと同時に、男達の前に出ず、影で見守る感覚もよく描かれていませんかね。これはロマンですよ。

役者さんが移りゆく心情を深く演じられ、かつ舞台の迫力がすごい。
小屋という設定を生かして、ダンス、マジックなどを実際にショーとして行い、エンターテイメント性を最大限まで高めています。
これは相当素晴らしい作品だと思います。

強いてダメだなあというところを挙げておくと、公演が土日で3回だけ。これはいけません。日程合わなかったり、見逃す可能性が高くなりますから。いい作品は最低5回ぐらいは頑張ってもらわないと。

来年1月には、今回の出演者も多数出演される劇団大穴との共同公演があるようです。
まあ、次回からは相当ハードル上げて観劇することになると思いますが、それ以上のものを見せてくれるでしょう。

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