スカイフィッシュ・ワルツ【Micro To Macro】100817
2010年08月17日 シアトリカル應典院
非常に良かった。
何がいいって、色々な伏線が綺麗につながるとてもうまい脚本に、緩急自在に演技を操られる役者さん達がぴったり合っていた。
組み込まれている生バンドも、単なる音響としてではなく、芝居の内容に絡むようになっている。
恐らくは映画をテーマにした舞台装置。イスなど小道具までが一貫したポリシーを持った作りになっており、そしてけっこう凝っている。作るの大変だったんじゃないかな。
ラストシーンのシャボン玉はお見事。毎公演やるのかな。この作品の最後にはふさわしい演出だ。
あらすじは簡単そうな話なんだけど、上述したように色々な事象が絡んで、つながっている要素があるので、うまく書けないので省略する。ここは、DVDを出すみたいなので、それを買いましょう。
と言って、自分で思いだせなくなると困るので、簡単に書き留めておく。
スランプで自分に自信を無くし気味の監督さん。ある日、老人から古い映画フィルムと新聞記事を渡される。
その新聞記事を見て、学生時代の大事な事件を思い出す。
自分が守ってあげられなかったあの女の子。
映画フィルムを友人ら二人とともに鑑賞していると、過去にトリップする。
あの子を助けるチャンス。
たとえ、今、そして未来の自分たちが不幸になっても、あの子を助けたい。
三人の必死な願いは・・・。
これで多分、私は思いだす。
雰囲気的にはクロノスジョウンターの伝説、メトロに乗ってみたいな感じ。
過去にトリップした三人は、女の子を助けようとするが何回か失敗して現在に戻ってしまう。
それでも少し過去を変えてしまった結果、貧乏になっていたり、足が不自由になっていたりと今の自分たちに大きな代償を被ることになる。
それでも、何度でも過去に戻ってチャレンジしようとする。
自分がつらい思いするのが分かっているのにバカげた話だ。でも、これは男の本能。多分、自分もそうすると思うし、そうするような男でありたい。
この何度も過去に向かう男たち三人の表情がとても良かった。決意を持った笑顔というのか。その懸命な表情を見ているだけで、少し心が揺れた。
最後、女の子を助けることに成功する。その時、女の子は感謝を込めて、過去に戻った監督さんの手を握る。
このシーン、事件が起こるきっかけになる学生時代に撮影していた映画のラストと同じ。目の見えない女の子をずっと影で支えていた男。目が見えるようになった女の子と会った時、当然顔は分からないが手が触れた瞬間にこの人だと分かってもらえるようなシーン。
過去に戻った監督は、あくまで影の存在。でも気持ちは伝わったということが分かる。
今回の観劇のきっかけは泥谷将さん(劇団鉛乃文檎)、ゲキバコ!の役者さん。
Z systemの客演、火曜日のゲキジョウで拝見した役者さん達。
(http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2010/05/z-system100517-.html)
(http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/30302vs2100720-.html)
一度目を引いた役者さん達が、違う公演でまたご活躍なのは何となく嬉しい。
ただ、印象がやっぱり毎回変わる。役が違うんだから当然と言えば当然だが。
泥谷さんは監督役で主演ということもあったのでしょうが、ものすごく熱かった。その中で時折おどけるような緊張と緩和みたいな技で目を引きつけられた。
印象が変わったと言っても、まっすぐひたむきなイメージは根本的に感じる。多分、これは演技というより、この方の性格なのだろう。
ゲキバコの方々は、前回拝見した時の役を少し引きずってるような性格の役だったので、大きくは変わらなかったな。特に目立つ感じでは無いのに目を引くのは、きっとセリフに気持ちを込めたりするのがうまいのだろう。前回の会話劇でもそうだった。
上述したように男が書きそうな脚本だけど、作・演出は石井テル子さんという女性。
熱いロッカー歌手みたいで、役どころもそれでした。
この劇団に少し興味が沸いたので、過去公演のDVDを3本買いました。
見てないDVDが20本ぐらいあるので、いつになるか分かりませんが、またこちらの感想も書きたいと思います。
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コメント
まさかこんな大変な時期に、感想までアップしていただけるとは・・・本当に感謝の気持ちでいっぱいで言葉になりません。
今回私が若い頃の監督を演じた役者に投げかける台詞の一つに「大事なもんが無くなってまうねん。めっさ大事って気づく前に無くなってまうねん」というものがありました。
・・・今、この状況でこういったことを言うのは、不吉の謗りを免れないのかもしれませんが、私も昨年の春に、長く患っていた父を亡くしました。
もちろん全ての状況が一致するわけではありませんし、私のような親不孝ばかりを重ねてきた人間と、SAISEI様を比較することは出来ませんが・・・やはり失ってからでは取り戻せないものが世の中にはあるのだと思います。
体力的にも、精神的にも本当にお疲れだと思いますが、どうぞお父様と過ごされる時間を、大切になさって下さい。
そして本当にお体をご自愛下さい。
また落ち着かれましたら、前回までのミクロの感想など、アップされることを楽しみにしております。
多謝。
投稿: 泥谷 | 2010年8月22日 (日) 01時42分
私は過去に戻るより2年後の自分に喝を入れたいです 先月人事移動した製品検査グループのグループ長に就く事を約束されてますから(ーー;)
今は前を向いて走らなきゃ
投稿: まこと | 2010年8月22日 (日) 06時53分
>泥谷さん
コメントありがとうございます。
そのセリフ、覚えてます。
そして、今の父のことと少しだぶらせて、思いをはせました。
8/23現在、もう時間の問題というところまで来ているのですが、最後の時を普通の人よりかは多く過ごしているような気がします。幸い、周囲の人たちの協力あって、少し仕事に余裕がありますので。
失って取り戻せないことも多いと思いますが、失うことにより、見えなかった大事なことにも気づくことができるような気持ちでいます。
また、大事なものを失って、ひと回り成長して、物事を考えられるような人間になれればと思います。
きっと、観劇の感覚も変わるかもしれません。
それにしても疲れてきました。もちろん、父もでしょうが。
人間、なかなか死ねません。
見ていて、人間の生への執着はすごいと思う反面、悲しくもなります。
次回公演に出演される頃には落ち着いているでしょう。
また、新たな気持ちで拝見させていただきます。
楽しみにしています。
投稿: SAISEI | 2010年8月23日 (月) 21時19分
>まことさん
喝を入れると同時に、今のまことさんを語ってあげないとね。
長になると、失わないといけないことも多くなるので、今の自分とは違った自分になっていると思うので。
検査部門かあ。私は働きにくい部門の一つですね。
正論と現実のはざまに苦しむところなので。
投稿: SAISEI | 2010年8月23日 (月) 21時23分