田舎に住む人たち【カンセイの法則】100710
2010年07月10日 芸術創造館
初見だと思っていましたが、調べてみると、昨年、一度拝見していますね。
運命的な人たち。アメリカ人になるように監禁された人達のお話しでした。この時は確か、役者さんは面白いけど、最後の謎解きがいまひとつだなあ、これだけのために長い時間かけるのはいかがなものかといったような感想だったと思います。
今回は少し印象の違う話でした。
結論から言うと、自分の好みの作品だったので楽しめた。最後も単なるハッピーエンドにしておらず、現実を少し考えさせるような終わり方。これはこれで納得のいくものでした。
舞台は田舎町の観光課。観光地が無いので仕事がありません。
やる気のない課長に同じく頼りない2人の男性、そしてしっかりものの女性1人がのんびりと働いています。
それでも、地域の人たちには好かれており、現場作業員、保険外交員、スナックのママ、料理屋など町の人達が集う憩いの場になっています。
新しい町長が誕生したことから事態は急変します。
はやりの事業仕分けで観光課を廃止するという案が出たのです。
そんな中、町に釣り客の男性2人がやってきます。宿泊先を探しに観光課を訪ねてきますが、廃止の件でバタバタしているので冷たくあしらわれます。でも、町の人達のフォローで無事に宿泊先も決まります。そして、釣りも楽しめることになりました。観光課の課長から冷たくあしらったお詫びに穴場を教えてもらったのです。
一方、何とか廃止を取りやめさせようと町の人が動きます。署名や寄付など出来ることは全てやるつもりです。観光課の職員も何とかアイディアを出して考え直させようと頑張ります。
そんな人のために働く町の人達の姿を見て、釣り客も自然と協力しだします。この釣り客、テーマパークのプランナー会社の上司と部下で、お得意の分野なのです。しかも、上司はこの町の出身者。祖父と課長は知り合いだったことも分かり、一挙に親近感が沸いてきたようです。
部下の方はすっかり町の人達に溶け込んで廃止取りやめ運動に参加していますが、上司はちょっと距離を置いているみたいです。厳しく冷徹に仕事をしてきたので、人のために働くという点に違和感を感じているようです。あまり目立った協力はしません。
その違和感を解消するかのように、観光課の女性と話をします。女性は東京に出て仕事をしていたが、結局つらくなって町に戻ってきたみたいです。会社に気に入られるため、娘が東京で働いているという親の誇りを満足させるため。自分のために働いていないことが分かった時に、戻る決意をしたようです。
最終的に出てきた案は釣り客の部下が出した町の自然を生かしたアスレチック。これなら、観光課も存在価値を認められ廃止は取りやめになりそうです。でも、上司がこれにケチをつけます。シーズンオフはどうするのか、年配の方はアスレチックはきついなど。一挙にしょげかえるみんな。一生懸命考えた案に、何もしない人がケチだけつけるのは卑怯だと怒りだす者もいます。
これに対し、上司は釣りも生かせばいいという回答。海上公園も一緒に作れば、シーズンオフにも対応できる。距離を置いているようでしたが、しっかり町のために考えていたようです。
案もまとまり忙しくなりそうです。人手が逆に足りなくなるかもしれません。釣り客の部下は、ここで働きたいと言いだします。これまで自分のためだけに働いてきており、人のために働く町の人達に興味を持ったようです。
ラスト。釣り客の部下はすっかり町に溶け込んでいます。近々、海上公園の除幕式も行われるみたいです。観光課の女性と釣り客の上司が電話で話しています。近況報告をしているようです。
かつての部下の変わりように驚きながらも、表情は微妙。人のため、自分のため、お金のため・・・。何のために働くのかという結論はまだ自分の中で見いだせていないようです。でも、この町での経験が、この男のこれからの働き方に影響を与えることは確かでしょう。
いつものようにざっくりあらすじ。
実際は町の人達のキャラはかなり個性的で、所々に笑いも盛り込まれています。
めでたしめでたしという単純な終わり方をしていないところが、とても作品のテーマの深さを感じて私は好印象です。
前に拝見した時にも少し感じたのですが、結局は同じことを言っているエピソードが中盤に重なってくるので、中だるみみたいな感じになります。個性的なキャラですから、インパクトは十分あるので、そんなにしつこくテーマを伝えてこなくてもいいような気がします。もう少しスマートな作りでも十分楽しめるかなといったところです。まあ、これは分かりません。本当にスマートにすると、終盤での盛り上がりがおかしくなるのかもしれないですし。
役者さんは課長さんがいい味だしてたな。隈本晃俊さん。優しい、頼りない、だけど一貫した何かを持っている。そんな設定のキャラですが、それが伝わってくるような雰囲気をすごく出されていました。
小野篤志さんかなあ。釣り客の上司の方のまだ自分の中で消化しきれていない感情みたいなものがある微妙な表情も印象に残りました。
過去に拝見していながら、記憶から消えておりましたが、今回でまた復活しました。
また次の公演も観に行きたいと思います。
| 固定リンク
「演劇」カテゴリの記事
- 【決定】2016年 観劇作品ベスト10 その3(2016.12.31)
- 2016年度 観劇作品ベスト10 その2(2016.12.30)
- 2016年度 観劇作品ベスト10 その1(2016.12.30)
- メビウス【劇団ショウダウン】161209(2016.12.09)
- イヤホンマン【ピンク地底人】161130(2016.12.01)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
事業仕分けだけではなく過疎化の進む町での切実な悩み 現状ですね
投稿: まこと | 2010年7月12日 (月) 12時19分
>まことさん
あの温泉地も昔は観光地だったんでしょ。
毎回泊まって思うけど、負の方向にしか進んでいないような感じで厳しそう。
投稿: SAISEI | 2010年7月13日 (火) 11時21分
観光地+宴会目的の慰安旅行先として有名でした
企業の弱体と比例するのは悲しい現状です
投稿: まこと | 2010年7月13日 (火) 12時33分
>まことさん
そういう雰囲気をまだ残しているものね。
それこそ、何かいい観光スポットでもあればねえ。
投稿: SAISEI | 2010年7月13日 (火) 23時44分