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2010年6月 1日 (火)

迷彩【劇団そとばこまちプロデュース ドン・小町】100530

2010年05月30日 そとばこまちアトリエ Black Boxx

きつい終わり方だったな。
サスペンスなので仕方が無いのでしょうが、個人的には好きではない。
幸せに終わらすこともできたのでしょうが、無理にどんでん返しをしてこういう終わり方にした感がある。
作品として話を魅せるというより、脚本家の技術を魅せることを主においたような感じがした。どうだ、考えつかなかっただろう、これがプロだみたいな。
前回拝見した「通天閣ブルース」は優しい話で終わり方もホロリとさせられて良かったんだけど。(http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2010/03/kitchen100322-e.html

作・演出が違うんですね。前回は坂田大地さん。今回は鈴木康信さん。
当日配布されるチラシに、鈴木さんのコメントが載っています。自分の今のライバルは坂田さん。冗談っぽく、過去公演で坂田さんの書く芝居が好きだというようなことをアンケートに書かれて、破きそうになったことも書かれています。ということは、こんな感想を見られたら気を悪くされてしまうかも。
でも、上に書いたように優しい終わり方にもできたのでしょうから、後は作家のポリシーですものね。それが万人受けするとは限らないということです。

舞台は取り壊しの決まった小学校の校舎。今はもう使われていません。
幽霊が出るとか、クスリの取引が行われているとか色々な噂があるようです。
その噂の真実性を高めるかのように、誰も入れないように周囲に壁があったりして、厳重に警備されています。

そこに卒業生の4人が思い出作りに集まってきます。
この校舎の警備会社社長の娘・遙。校舎に入り込めたのもこの女性のおかげです。
その友達。誠・真希・藍子。誠はちょっと頼りない、真希はごく平凡な女性、藍子は霊感が強いみたいです。
校舎を回って見ますが特に何も無い。でも、藍子は何か感じると言っています。

おかしな人物が登場します。美少女探偵の翼。何でも雄太という人物を探しているみたいです。
さらに、現役刑事の太。彼も雄太を含む3人の行方を追っています。
どうやら数年前にこの校舎で3人が失踪するという事件があったみたいです。

回想シーン。
不良っぽい男性2人が校舎でじゃれあっています。薫と雄太。2人とも母子家庭。
仲間の女性、晶に呼び出されたみたいです。
晶は地元の財閥の娘。最初は冗談っぽく、また綺麗なピアスを父からもらったとか自慢をしていますが、重大なことを話し始めます。
3人は兄弟だというのです。要するに異母兄弟です。
父の命もあと数年というところなので、本当のことを伝えられたようです。父は薫と雄太に会って謝りたいと言っています。それを晶が伝えるのですが、2人は全く会おうとしません。父として認めないつもりです。
仕方が無く、晶は遺産のことを話します。みんなで分けろと言っていると。
すると手のひらを返したように、父と会うと言いだす薫と雄太。
晶はそれに対して、父を侮辱されたような気持ちになり、その場で2人を誤って殺してしまいます。

現在に戻ります。
部屋に探偵、真希、藍子。他の人たちは、失踪した3人の死体が埋まっているのではないかと地面を掘っています。
床の上にピアス。探偵が発見します。
藍子にそれを渡すと、得意の霊感を働かせます。そして、事件の真相が分かったみたいです。
藍子がみんなを集めて欲しいというので、探偵は他の人たちを呼びに行きます。
部屋に残った真希と藍子。藍子に何が分かったのか聞くと、藍子は事件の真相を語ります。
晶という女性が2人を殺し、校舎の壁に死体を埋めたことを。
真希はなぜか焦ります。そして、藍子の頭にブロックを思いっきり投げつけます。悲鳴。

みんなが部屋に駆けつけると倒れた藍子と包丁で切り付けられた真希。
藍子は意識があるようです。刑事が車で病院に運びます。
その時、刑事と探偵が何やら話をしています。何か内緒話みたいです。

探偵はこう推理します。ブロックとナイフ。凶器を変える意味が分かりません。でも、これなら話がとおります。事件の真相を知った藍子が邪魔になってブロックを投げつけたのは真希。真希は自分も被害者になってごまかそうとナイフで自分を切った。
反論する真希と仲間たち。
でもそこに刑事から電話です。ピアスの指紋と真希の指紋が一致した。つまり真希は晶と同一人物だということです。

真相。晶は薫と雄太を殺してしまた。このことを父に話します。父は当然かばいます。壁に死体を埋め、財力を利用して校舎を閉鎖したということです。晶は行方不明にするために、整形や戸籍をいじって真希という女性を作り上げたのです。

追い込まれた真希は包丁をみんなに突きつけます。説得しますが、気が高ぶっているようです。この事件のせいで大好きだった父からも見放されたと思っており、自分はもうどうなってもいいと考えているようです。
探偵が機転を効かせ、部屋の電気を一瞬消して取り押さえます。
そこにまた刑事から連絡。藍子が無事だったということと、晶、つまり真希の父が亡くなったということ。
遺書が残されていたようです。内容は事件について書かれていました。
父が薫と雄太を殺してしまい、壁に埋めた。晶は殺人犯の娘になってしまうので、真希という女性に仕立てた。

父が自分のことを大切に思ってくれていたことを知った真希。涙を流して、父に感謝します。
事前情報で泣けるとブログで書かれていたのですが、ここまではトリックが明らかになっただけ。もうすぐ終わりそうだしとどこで泣けるのと思っていましたが、ここで泣けました。真希役の渡部瞳さんの貯めた涙にうるっときてしまいました。これで一件落着かと思ったらまだ続きがありました。

真希が拳銃を持って立ちあがり、またみんなに突きつけます。刑事から取っていたようです。
もう父がいなくなっては自分は生きていても仕方がない。遺産とかは別にいらない。元々、父と薫や雄太と一緒に楽しく暮らすことを望んでいたのにどうしてこうなったのか。
気が高ぶる真希は自分のこめかみに拳銃を。
そこで壁から手が出てきます。そして、真希の手から拳銃を奪い取ります。他の人には見えていないみたいです。
気が狂ったように、謝りを繰り返す真希。何とか取りおさえました。
薫や雄太は晶を恨んでおらず、自殺から助けた。この2人たちのためにもしっかり生きていこうみたいな感じでラストかなと思ったらこれも違います。それだったら、私は最高の評価だったんですが。まだ、話は続きます。

探偵は刑事を呼んでくるようにみんなに言います。部屋には探偵と真希だけに。
真希は完全に気が触れており脱力状態。
探偵が真希の手に拳銃を握らせて、真希のこめかみに銃口を向けます。

もう一つの真相。
探偵も実は真希の異母兄弟。父も最近知ったようです。
そのため、父は事件の真相を探偵に全て明かし、自分の死後、真希を助けて欲しいと言われていたのです。もちろん遺産も2人で分けろと。
探偵は考えます。遺産を一人占めする方法。
校舎取り壊しの嘘の情報を流し、真希を呼び込む。そして、用意したピアスを床に落としておいて、上に書いたように話を進める。少々、シナリオどおりで無いところも出てきましたが、これで全てフィニッシュです。

お姉ちゃん、さよならという探偵の言葉とともに銃声。

これで終わり。何かきついでしょ。

通天閣ブルースの時にも書きましたが、ここは役者さんの声や動きなど全てがすごくしっかりしているように見える。こういう時は観劇しやすい。役者さんの何か不安さが目立ち、それが気になって話に集中できないことがありますから。この劇団ならまずそんなことはないでしょう。まだ全員ではありませんが、だんだん顔と名前が一致してきました。客演されている時でもすぐ発見できれば、きっとその作品も楽しみやすくなると思うのでしっかり覚えておかないといけません。

今回で確実に覚えたと思われる役者さんだけ少し。

皆さん、役にすごくはまっていたのですが、一番は探偵の南園倫奈さんかな。
美少女探偵として、少年っぽくおちゃらけながらも事件解決を目指すかわいらしい役で表情とかもそれに合っていました。それがラストシーンでは・・・。ずっとベレー帽をかぶられていたのですが、ラストは外します。表情も一転、悪魔のような嫌な笑いの表情になっているし、帽子をかぶっていないだけで、本当に別人みたい。

遙役、坂本えりこさん(劇団万絵巻)。役の影響もあるのでしょうが、お嬢様風の美人さん。ずっとどこかで見たことがあると思っており、劇団万絵巻ならば2作品、過去に拝見していますので思い出していました。多分、百鬼夜行絵巻で巫女みたいな役を演じた方ではと。自分のブログを見直してみたら、この時に限って役者の名前を書いていない。でも、美人だとこの時も書いているので多分間違いないでしょう。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2010/01/100110-cbdd.html
それだけ目を引くので何か魅力があるんでしょう。もちろん外観とかだけの話ではなく。
今回も、役にはまった感じでとてもよかった。
ただ、感情的なセリフの時に他の役者より聞き取りにくくなるところが数か所ありました。

渡部瞳さん。上にも書きましたが、涙するシーンは非常に素敵でした。うつむいていて、顔を上げた時に貯めていた涙を見てこちらもウルウルでしたから。
残念だったなと思うことがあります。この作品は2回見ると違った視点で見られるので面白いと思います。2回目は犯人がこの方演じる真希だと分かっていますので、明らかになるにつれての不安な表情などがもっと楽しめたはず。最初は全然気付かなかったので、あまり注目して見ておらず、そういえば、おかしな行動してたな、そんな表情を確かにしていたなぐらいにしか思えなくて。
もっとこの方を注目して見るような観劇もしてみたかった。千秋楽だったので残念。

鈴木康信さん。刑事役。通天閣ブルースでは軽い知覚障害者で犯行を起こす役の人。その時の役に合った澄んだ眼や優しい笑顔が印象的で、今回も出てこられてすぐ気付きました。今回は、真面目で頼りない感じを出されていました。
それより、この方が作・演出。こんなブラックなことを考えつくとは思えないような好青年っぽいですけどね。まあ、時折されるニヤリとした笑いとかの奥に、ブラックな一面が少し見られはしますがね。
おもしろいですね。自分が役者ならあんな優しい役を演じるのに、作・演出になるとまた違う形の作品を作り出す。豊富な才能というところでしょう。

イトウエリさん。回想シーンでの晶役。この方は客演でこれまでもよく拝見している。表情の豊かさは相変わらずすごいと毎回思わされます。童顔だからかな、シリアスに人を殺すようなシーンでは、その表情に違和感があります。

終わり方が暗かったためか、終演後に10分ほどのショーがありました。いつもなら、作品の余韻に浸るために、こういうのは見ないで帰るのですが、今回はリセットさせてもらおうと残りました。
演目はベルサイユの薔薇のパロディー。衣装はしっかり豪華な物を着て、何かごちゃごちゃやられます。余興のレベルでした。

次回公演は10月。今度はどんな感じになるのかな。楽しみにしています。

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