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2010年5月 6日 (木)

いかけしごむ【toy-2 Produce】100505

2010年05月05日 インディペンデントシアター 1st

昨日に引き続き、観劇。
本日はけしチーム。
昇竜之助さん(魚クラブ)×諏訪いつみさん(満月動物園)×川端優紀さん(ミジンコターボ)。
(いかチームの感想:http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2010/05/toy-2-produce10.html

1つの脚本に3パターンの演出を加えて全く異なる3つの物語を作るという実験的公演です。単なるトリプルキャストとは異なります。

演出って何をしているのかという問いかけに真っ向から勝負するそうです。

非常に面白い試みだなと思っていました。素人にとって、最初、作・演出って書いてるけど演出って何をするのかなというのはきっとみんな考えることだと思いますので。
最近でこそ、演出・役者さんは当たり前、制作や舞台の音響や照明さん達の歩調がそろわないと残念な結果になることが何となく理解できるようになってきました。もしかしたら、観客という立場にすら、その作品を最高のものにする要素が与えられているかもしれないと思うぐらいです。しらけた感覚で始めから見ていたら、どんないい作品でもきっと舞台としては盛り上がらないはずです。

ところで、どうも仕事柄、実験する時に絶対してはいけないことを考えてしまいます。
それは、比較するときに変数ファクターを2つ以上変えること。
この場合は、目的を1つの物語における演出の効果を知りたいということに置いた時、変数は演出。つまり、演出家自体か演出パターンを変えて比較するのが正しい実験の組み方のはずです。
今回は演出家は戒田竜治さんという方だけなので、この方が3つの演出パターンでやってみるという形だといいわけです。
でも、役者さんも変えちゃってるんですよね。
そうなると、物語が変わったとしても、それは役者さんのせいだったという結論になってしまう可能性もあるわけです。
もちろん、役者さんというファクターは演出家に完全に従属するものであるという基本設定があればそれでいいのですが。つまり、役者さんというものは、完全に演出家によってコントロールされるものなので、どんな役者さんを選択しても大きな差異は生み出さないということです。でも、これは絶対違いますよね。演出家のオーラも相当なものでしょうが、役者さんのオーラも負けるものではなく、時には演出家など食ってしまう時もあると思いますから。

何でこんなことを書いたかと言うと、2つのチームを拝見して、違う物語だとまで感じる能力は残念ながらありませんでしたが、確かに何か違うということは感じてびっくりしているからです。

個々の気付いた細かなところに関しては、こっちの方が効果的だなとか、分かりやすいなという演出の違いが良く分かるんです。

例えば、最初の女性の登場シーンもいかチームは客席から舞台に向けて登場しますが、けしチームは普通に舞台の横から出てきます。最初のセリフがここは世界の行き着くところというようなことを言われますので、前者の方が行き止まり感が強く出るし、後ろ向きで話されるので、緊張感は確実に出ます。

女性が最後に自分のことを語る時、いかチームは編み物をしながら、けしチームはずっと持っていた本の表紙を破りながらしゃべります。本の中身は母子手帳で私のような深くものを考えれない人は、こちらの方が狂気性みたいなものを感じやすい。でも、よく考えると死んだ子供のためにする編み物の方がそれはぞっとする恐さがあるなあ、でも現実に私はそれに最初は気付かなかったのだから感性弱い私のような客にもすごいと感じさせるには後者の方がいいなあとか思うわけです。

見終わって、確かに違うなと思う感情がこのような細かな演出の違いの積み重ねから生み出されているのか、それはそれで別物で役者さんの力によるものなのか、それすら演出家が制御したのかなどを考えてしまいます。
こうなると、やっぱり役者さんを固定しておいてくれれば、はっきりしたのにと考えてしまうわけですね。
女優さんの方は、同劇団ということもあるのか、非常に似た感じだったのですが、男優さんは明らかに個性が違いましたので、特にそう思いました。

まあ、分からなかったとはいえ、面白い企画でした。
演劇論を勉強する気などはさらさらありませんが、何でこんなに観劇することにはまってしまったのか、演劇というもののどこに魅力をそんなにまで感じるのかは少しずつ知りたいなと思っています。

それにしても、こういう戯曲作品は難しい。3チーム全て見たかったのですが、公演日程が2日に詰め込まれているので、2つだけにしました。とてもじゃないけど1日2つは見れません。頭が痛くなります。
こういう作品を見ると、ただ笑っていればいいような作品がすごく懐かしくなります。

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コメント

簡単に解説いたしました。
よろしければ、ご参考までに。

投稿: CQツカモト | 2010年5月 9日 (日) 03時43分

>CQツカモト様
コメントありがとうございます。
うわ~、舞台監督さんから直々のコメントですよ。
感動w(゚o゚)w
ここに回答しても、また来られるとは思えないので、直接ブログの方に書き込むことにします。

投稿: SAISEI | 2010年5月 9日 (日) 10時29分

!!(゚ロ゚屮)屮すげーーーーーーっ!!!

監督さんなんですか!?

SAISEIさんよかったですね★

最近はSAISEIさんの観劇ブログ・・・。

幅利かせちゃってますもんねっ(◎´∀`)ノ

投稿: mio | 2010年5月10日 (月) 00時11分

>mioさん
解説を拝見したんですが、やっぱりプロの解説は分かりやすいわ。
おまえは何を見てるんだと突っ込まれるぐらいの見方をしてたみたいで恥ずかしいです゚゚(´O`)°゚
でも、目の付けどころは大きくずれていないようで、少し安心。

投稿: SAISEI | 2010年5月10日 (月) 01時05分

お返事遅くなりました。
【舞台監督の仕事について】
関西の小劇場に舞台監督が定着したのは、ここ15年の話です。
私は二十数年前に大阪で舞台監督を始めまして、現在小劇場で行われている舞台監督のやり方のほとんどを考案し実践して参りました。
ですから、関西小劇場に私より年長の舞台監督は居りません。
元は舞台監督とは中~大劇場の安全管理や進行をする役職です。
アマチュアが主力の小劇場では、観客動員数も少なく、入場料も安いため、予算の関係から長年存在しない役職でした。
或いは志そうにも薄給で、生活していけなかったのです。
しかし舞台経験や知識の少ないアマチュアが出入りする小劇場こそ、熟練者の知識と経験が必要で、それを誰かが定着させない限り、小劇場の技術的進歩が立ち遅れてしまいます。
そんな思いから始めた仕事ですが、現在では新たな技術者の育成や、数ある若手劇団から新たな才能の発掘と、将来的な可能性の推察を続けて参りました。
小劇場における舞台監督とは、劇作家や演出家がイメージした舞台作品を、時間的にも経済的にも、もちろんビジュアル的にも、一番イメージに近い形で、最も段取り良くスピーディーに、かつ全員が安全で危険のないように作成援助し、監督することが主な仕事です。
また劇場によって、その劇場だけのルールがあり、それを守らせながら作業するのも大切で、主催者のこと、劇場のこと、出演者のこと、スタッフのこと、観客のこと、近隣住民の迷惑まで考え、起こり得るトラブルを想像し、アクシデントに即座に対応しなければなりません。
概ね、気遣いが仕事です。
演出家との関わりは、基本的には演出のイメージ通りに作品を仕上げるため、技術スタッフを動かす司令塔の役割でありながら、危険を伴う演出プランや、劇場法や独自の劇場ルールによる禁止事項に反する演出プランには、はっきりとその旨を伝えるだけでなく、代替案を提示し、演出イメージを損なわないよう留意するのが役割です。
分かり辛いですよね。
観客の中には、演出と監督を混同される方もしばしば居られますし、馴染みのない舞台用語が頻繁に小劇場では使われるので、何なりとご質問下さいませ。
たとえば、我々は[台本]とよく言いますが、[脚本]とも[戯曲]とも呼ばれます。
セリフにしても、[台詞]と書く時と、[科白]と書く時があります。
実は、それぞれ意味が違うのです。
あ、字数が足りなくなりました。
失礼…。

投稿: CQツカモト | 2010年5月14日 (金) 07時12分

>CQツカモト様
お~(゚0゚)
ちょっとした疑問をブログの方に書き込みしただけなのに、こんなご丁寧な回答をいただけるとは。

私が思っていた内容と近からず遠からずといった感じです。
少なくとも演劇における演出と監督の違いは理解できました。
何か、調整、調整でストレス貯まりそうな仕事ですね(゚ー゚)
それにしても、劇場によってすることがちょっと違いそうで、それだけ経験が必要ということですね。もしかしたら、あの劇場では力を発揮しにくいとか、相性があったりするんですかね。
面白い勉強をさせていただきました。

お忙しいところ、ありがとうございました。
(明日から2ndで公演ですよね。チラシにお名前が載っていました)

ちなみに台本・脚本・戯曲、台詞・科白はネットで調べました。
だいたい分かりましたが、台本・脚本はまだはっきりしません。微妙なニュアンスは何となく分かるんですが。

投稿: SAISEI | 2010年5月14日 (金) 10時47分

要約すると以下の通りです。

☆戯曲
戯曲は言語によって表現された文学の1ジャンルで、もちろん上演することを前提に書かれているが、それ自体がひとつの作品であり文学です。
よって演劇に全く興味のない読者も在り、上演目的でなく読み物として書かれた物も存在します。

☆脚本
脚本は上演することを前提に書かれた戯曲であり、場面の設定やト書きによる演技や装置・照明・音響など、作者の指定が書かれた物で、あくまで演劇上演を目的としています。

☆台本
上演のために必要な条件や指示などを完全に記録し、テキスト・レジーした脚本のことで、最終的に書き換えの必要ない台本を[完成台本]または[上演台本]と呼びます。
通常セリフの上下に余白があり、スタッフによって書き足しが出来るようになっています。
さらに照明や音響・映像・装置の転換・衣装の着替えなどを書き加えた物を[完全台本]と呼びます。
小劇場では最終的な完全台本が存在することが少なく、しばしば舞台監督の台本が完全台本に一番近い物になります。

舞監@日誌に時々☆印で、紛らわしい舞台用語を解説しています。
mixiのトップページに、それらをまとめたリンクを張っております。

投稿: CQツカモト | 2010年5月17日 (月) 09時23分

>CQツカモト様
毎回ご丁寧にありがとうございます。
たまに面白かった作品の台本が売っていて、記念に購入するのですが、あらためて見直すと脚本と台本の間っぽいような気がします。
完全台本なんてものは、素人からすると、とんでもなく書き加えられて恐ろしい物に思えますね。
それにしても、本一冊があんな公演の形になることは、ただただすごいと感じます。

投稿: SAISEI | 2010年5月17日 (月) 10時38分

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