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2010年5月23日 (日)

トバスアタマ【売込隊ビーム】100521

2010年05月21日 ABCホール

前回の若手公演「マーチ!!」でもそうだったが、これはきっと劇団や作・演出の横山拓也さんという方の策略にはめられているみたい。
不安な顔で作品を観ながら、ラストで唖然とした顔の客を舞台から見るのはさぞかし楽しいことでしょう。
まあ、こちらも楽しかったからいいんだけど、いいようにやられるのも癪だなという感じでしょうか。

深刻で真面目な問題を楽しく演じながらも決しておちゃらけた感じにはしない、ごちゃごちゃ言わないでビシッと作品のテーマを訴える、この劇団のうまさであり、これに魅力を感じるところが大きいような気がします。
考える必要は無いですが、この作品、どこか違う劇団がやったら、悪い意味で客は唖然として帰ることになるかもしれません。

(一応、以下ネタバレ注意)

開演前から舞台の隅にある部屋には男の子(実は女)が小さく座っています。ぴくりとも動かない。
開演時間になった頃にお母さんらしき人登場。二人で黙々と御飯を食べ始めます。
ざわざわしていた客席も徐々に静まってくる。
暗転。
部屋にはお母さん、男の子ともう一人青年。

イライラした口調で話すお母さん、どこか脅えて常に気遣いながら話す男の子、明るくはっきり言いたいことをしゃべる青年。
この会話の流れから、イメージするのは虐待。
何らかの理由でお母さんは男の子を嫌っている。心の底では愛情はあるのかもしれないが。虐待のよく聞く典型的なパターンを説明することなく伝えてくる。青年は恐らく、男の子の中の別感情。

この親子に幼馴染の女の子、その叔父、学校の先生、児童相談員、犬とその飼い主、車いすの奥さんとその主人、ダンススクールの先生が関わって話が進む。

男の子は部屋に軟禁状態。先生や相談員は部屋に入り込もうとするが、母親に拒絶される。
部屋の中では男の子と青年が会話をしている。救ってくれる人が現れないかと。

幼馴染の女の子だけ何とか部屋に入って会話する。
淡々とした会話。子供にできることは少ない。
それにこの女の子も叔父から性的虐待を受けている。

ある日、児童相談員の薦めでダンススクールに親子を通わす。
先生、幼馴染の女の子も入った楽しい時間を過ごすことで、少し改善傾向が見られる。
でも、女の子が虐待の言葉を母親に話したことで、再び拒絶。そのわずかな望みすら消える。

男の子と女の子が会話する。女の子は強気な性格。これ以上は耐えられないので、今晩、叔父を刺すと。
自分も殺して逃げればいいと。男の子にはそんな勇気は無い。
女の子はそれを実行。

虐待の原因。
男の子の父親、この人が妊娠した母を捨てている。好きと憎しみの入り組んだ感情。母親は子供に父親の名前を付ける。本当は女の子なのに。そして、ずっと父への入り組んだ感情をもって育ててきている。
男の子が創り出した想像の青年。母が好きだった父の姿が入っている。そうすることで母に好かれたいと思っている。それが、また母の感情を狂わせる。

楽しかった時間が忘れられず、男の子は母親の目を盗んでダンススクールに向かう。

一方、母親は相談員に説得を受けている。
そこに父が来る。もう自分の中では過去の女。子供に自分の名前を付けて育てている事実を知り、気味悪がる。そして怒りの感情を持つ。妊娠した時に中絶しないと腹を殴ると言ったはずだと、今、母親を凶器的に殴りつける。

ダンススクール。勇気を持って出てきた男の子を歓迎。楽しくダンス。

駆け込んでくる相談員。病院に母親が運ばれ、危険な状態だと。
慌てふためく周囲。
その中で黙々と踊る男の子。
暗転。

話の流れはこんな感じでした。

あらゆることを全て解決せずに終わらせています。もどかしいですが、これこそがこの作品のテーマにした虐待の持つ怖さなのだと思います。

ところで、上のあらすじに全く書かなかった役があります。
犬とその飼い主、車いすの奥さんとその主人。

犬と奥さんがなぜか体と心が入れ替わってしまいます。
鎮静剤を打たれて静かにしている奥さん(犬)、自分に気付いてくれと主人に訴えかける犬(奥さん)。
奥さんがダンススクールに通っており、犬があるダンスを踊ることで、主人がその事実に気付きます。
2人の出した解決案は、主人は犬を飼う、飼い主は奥さんと住む。
でもこれは無理。
そこで最終的にはみんなで住むというところに落ち着きます。

このエピソードが話の流れにちょこちょこと入り込みます。
何を意味しているのかよく分かりません。心と体の乖離とかかなあ。絶望かなあ。

話だけだと深刻過ぎて、鬱々と観劇することになりそうですが、実際は全くそうではありません。
役を全て個性的にしており、ところどころで笑いという救いが入り込みます。
それもけっこうな頻度で。
テーマがテーマだけに、笑いとか入れるとあまりいい感じがしなさそうなんですが、全く拒否することなく受け入れられる。このあたりは、劇団のオーラであり、不思議なものです。

役者さんは、客演の方々が活躍。

田渕法明さん(アクサル)は、青年と父役。どちらも共通のものを持ちながら、明るい青年と荒れた父を演じ分けられており、うまいんだなと思いました。この人、外見がすごくかっこよくかわいらしいのに、こんな技まで見せられたら、男はちょっと嫉妬しますね。今度は一人芝居をされるみたい。今回、拝見してかなりいい作品を見せていただけるのではないだろうかと判断しました。観に行こうと思ってます。

楠見薫さん。ベテランさんですよね。お母さん役。イライラした感じがぴったりはまる。本当はもっとコミカルなことをされることが多いのに今回はずいぶん深刻な役でした。それでも数か所、笑わせていただきましたけどね。

橋爪未萠里さん(劇団赤鬼)。毎回、名前を書く時の変換がややこしい。よく使うので登録しておくかな。それは置いておいて、幼馴染の女の子役。相変わらず、生意気でかわいらしい役をさせればピカ一です。この方は、セリフの間の取り方とかがうまいのかな。大した言葉で無いのに、笑いがきますね。

GiantGrammyからはともさかけんさん、真心さん。犬の飼い主と叔父役。
犬の飼い主は話を逆にスムーズに進行させないようなうっとおしいキャラクター。これがぴったりとか書くとうっとおしいということになるので、語弊がありますが、本当にそうだった。
叔父は優しい仮面に隠れた狂気性が見られてすごかった。

この後300秒ショーというアフターイベントがあったのですが、見るのやめました。
少しこの作品の余韻に浸りたかったので。

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コメント

あたしはこうゆう作品は正直大嫌いです。

そんな簡単に虐待の問題を劇化するものじゃないと

思っている方なんで・・・。

これだけ情報が行き交いする今は、変なこと考えるバカも

居たりしますもんね┐( ̄ヘ ̄)┌ フゥゥ~

投稿: mio | 2010年5月23日 (日) 15時39分

>mioさん
多分そういう反応するとなんとなく思ってた。
人が傷ついたりする言葉や行動に嫌悪感を人一倍示すよね。
虐待は別にして、私は個人的にそういう作品を見るのは嫌いじゃないんだ。
もやもやしたものが残るので嫌な気分になったり、自分とかけ離れた考え方の違いにショックを受けたりするんだけど、色々と考えさせられることが経験になるような気がして。

投稿: SAISEI | 2010年5月24日 (月) 15時30分

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