らぶドロッドロ人間【悪い芝居】100519
2010年05月19日 ART COMPLEX 1928
ここは観るたびに劇団のイメージが変わります。
初めて舞台で拝見したのは「嘘ツキ、号泣」。若い人たちのはじけた元気なめちゃくちゃさを出しながらも、社会派作品を丁寧に仕上げている感想で面白そうな劇団だなと興味を持ったのが始まり。
この時、購入したDVDで過去作品を2つほど見るが、何かよく分からない。この人たち、ぶっ飛んでるなあと思わせながらも、何か作品には奥深いものが感じられる。そして、その答えは作品の中で教えてくれず、自分達で考えていきなさいと言わんばかりのラストを迎える。
続く「最低の夢」はめちゃくちゃ。役者さん全員、気が狂っているのかと思わすほど。PTAのおばさんなどが見ようものなら、本当に失神してもおかしくない。
最近では中之島春の文化祭で、客をどん引きさせるぐらいのパフォーマンスで存在感をアピールしてくる。
前置きが長くなりましたが、今回は私の中では秀逸。素晴らしかった。
(以下、舞台セットのことなどを書いているので、これから観られる方はご注意ください。)
端的に書くと愛をテーマにしているのだろうが、その表現の仕方がとても個性的。演劇ならではの表現の形だろう。こういう作品を観劇すると映画でもなく、小説でもなく、演劇を楽しんでいるのだということが自分の中で理解できる。
舞台は不思議な空間。写真でも見せないと説明しにくいが、簡単に言うと下が森で上が普通の部屋。本当に上と下がつながっているわけではない。下の森は空想世界と考えていいのだと思う。
あらすじも書きにくい。
上の部屋は主人公の心という女性の部屋。でも彼女はそこにはいない。彼女の友達がなぜか住んでいる。時折、彼氏やバイト先で心を慕う男が訪ねてくる。彼女のご両親も様子を見に来る。
彼女の好きだった彼氏と友達がこの部屋で愛し合っているところを見てしまい、彼女は風呂場で恐らく自殺しようとしたのだと思う。発見された時は倒れて頭が割れてドロドロだったみたい。それで入院しているみたい。
一方、森の中。心はここにいる。逃げ回っている。男が連れ戻しに来る。拒否して殴りかかる。森の監視員らしきおじさんとおばさんも心を探す。心に会いたがる男もさまよう。現実世界での彼氏、両親、バイト先の子だ。
話はこの上下の心の現実と空想世界がシンクロしながら進む。セリフや行動などが互いにかぶりあったりする。
最後は、現実世界の上にみんなが集まる。心の退院を示唆しているのか。心は後遺症か正常な精神ではなさそう。でも、みんな喜んでいる雰囲気。それが本当に心からなのかは分からない。下の世界には彼氏ただ一人。いまだ心を裏切った罪の意識があるのか、現実世界へは戻っていない。
ラストは現実世界の心と空想世界の彼氏が目を合わせる。
これはハッピーエンドなのかな。色々な見方があるのだろうが、私はラストに恐怖を感じた。
最初はどんな設定なのか全く分からず、ただこの不思議な空間に引き込まれる。その後、話が分かってきて互いの世界がある程度理解できても、終始、何か不安を感じる空気が存在する。だから、それを取り払うために集中して舞台にのめりこむ。劇団の策略にうまくはめられているのだろう。
この雰囲気を作り出しているのは、もちろん役者さんのオーラであろうが、心役のきたまりさんという方の影響は強いように感じる。悪い芝居単体では、この雰囲気は作り出せないのではないだろうか。
きたまりさんはダンサーさんらしい。この作品ではポップな明るいダンスではなく、抽象的、幻想的といった言葉で表したいようなダンスを披露されていた。
漫画のガラスの仮面でもあった、火・土・水・風などを体で表現することができている感じ。
実際、それほどのセリフは無いが、心の持つその時の感情は全て体の動きを通じて伝わってくる。
ずっと負のイメージで怖い感じだったが、最後の挨拶ではにっこり笑顔。
終始、何かに脅えるような見方をしていたためか、その笑顔にすごく安堵感を感じた。
次回公演は、冬に大阪でされるみたい。
今度はどんな感じで攻めてくるのか。楽しみな劇団です。
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コメント
いい作品と劇団のようですね~★
中ノ島『春の文化祭』なんかでやってる劇団なら
相当大きい有名どころなんですかね???
投稿: mio | 2010年5月23日 (日) 15時20分
>mioさん
設立してからまだそんなには経ってないみたいだけど、最近、特に注目を浴びている京都の劇団です。
客演もどんどん増えており、今年は至る所で劇団員の方を拝見できそう。
今回の公演も人気が高く、一日追加公演が決まったそうです。
投稿: SAISEI | 2010年5月24日 (月) 15時15分