＜DVD＞FOR LIFE！【劇団赤鬼】

昨年の7月にABCホール、11月に神戸ビエンナーレ屋外ステージで拝見した作品。

今週末に三田でまた再演があるので、その前にもう一度見直しておきます。

何度見ても、この劇団らしいいい作品です。

素人ですから、具体的なことは書けませんが、役者さんの演技力が半端じゃないです。

舞台は南の小島のホテル。親子で経営している小さなホテルです。
150年に一度やってくる彗星ホルスを見にやってきた4組の客。
女性SF作家、今どきのノリノリの新婚カップル、何やら怪しい男、そして引きこもりになっているSF大好き少年とその両親の家族。物語の主役はこの家族。
この家族、父と息子がうまくいっていません。よくありがちの仕事第一で息子にかまってやれず、距離があいてしまっているのです。今回の家族旅行はその距離を埋めることが目的です（どうしても家族旅行をしないといけない理由がありますが、それはネタバレになるので書きません）。
ひょんなことから、このホテルでUFO騒ぎが起こります。彗星ホルスと一緒にやってきた宇宙人がこのホテルの中の誰かに乗り移っているというのです。
SF大好き少年はそれが父親ではないかと疑い始めます。そして、父はそれを認めます。もちろん、そんなわけないのですが、少年との距離を縮めるチャンスだと思ったのです。
地球を調べにやってきた宇宙人とそれに協力する少年というおかしな関係ながらも、これまで失っていた二人の楽しい時間。
やがて、その楽しい時間に終わりがきます。
なぜなら・・・。

もし、続きを知りたいという方がいらっしゃれば、2/28の三田の公演に行きましょう。それか、DVDを購入してみてください。

親子の絆を素敵に描いた心温まる作品です。色々な思いをもった登場人物が出てきますが、全員が優しいという点で共通しています。

大好きな作品なので、役者全員紹介。

女性SF作家は山口尋美さん。とっても落ち着いた存在感のある綺麗な方です。ドタバタになりがちな雰囲気をうまく抑えるような感じで振舞われていました。言葉通り、正真正銘の女優だと思っています。

ノリノリの新婚は竹田聡支さんと橋爪未萌里さん。今どきの若者をうまく極端に演じられていました。二人の掛け合いがお見事。何回も笑わせていただきました。関係ないですが、橋爪さんはめちゃくちゃかわいいです。今回はギャルの役だからなおのこと。

怪しげな男は行澤孝さん。怪しく、頼りないダメ男。でもそれは優しさゆえににじみ出てきているといった役です。これはこの方の十八番なんではないでしょうか。ダメ男かはともかく、優しい雰囲気は舞台の外でもオーラを出されています。公演の後は、ロビーで誰よりも大きい声で感謝の言葉を言われているのを何回も拝見しています。この劇団の赤鬼の座長さんですから、客を楽しませるという責任感が強く感じられ、とても好感をもっています。

ホテル経営の親子は岡本拓朗さんと酒井扇次郎さん。酒井さんは客演です。藤山寛美さんのお孫さんです。調べたところ、この公演が本格的な舞台デビューだったとのこと。ごく普通って感じなんですが、存在感にあふれています。さわやか好青年です。
岡本さんは、相変わらずくどい感じで演技されます。悪く書いているみたいですが、そんなことなく嫌味が全くないくどさです。細かな笑いを入れているのが面白いです。ネタじゃなくて、その入れようとしている姿が。

ちょっとしか出てこられませんでしたが、医師役の全めいなさん。この当時はたしか劇団に入りたてだったと思います。新人さんというのを知って拝見していたせいもあるでしょうが、緊張されていたように感じました。その後、11月にアクトレスというこの劇団の女優さんだけで結成されたスプリングバスの公演を観劇していますが、どうどうとされていましたね。

最後は主役のご家族。父は土性正照さん、母は田川徳子さん、息子は西国原菜々さん。土性さんは貫録ですね。にじみ出る父親の不器用な愛情を見事に伝えます。お気に入り役者さんの一人だからひいき目が入りますが、素晴らしい男優さんであることは間違いないです。
田川さんは、おっとりしながらも意志の強いお母さん像を演じられています。ただ、この方のこんな役は初めて見ました。さすが役者さんだけあって、いろんな役をこなすんだなと感心して見ていました。本当はもっとはじけた役が多いです。舞台の空気を一瞬で変えてしまうような、アドリブか演出かは知りませんが笑いや振舞いを入れたりするのが普通のイメージがあります。今回はだいぶ我慢していたのでは。まあ、容姿はおとなしそうなかわいらしい感じなので、初めて見たのがこの役だったら印象が違ったでしょうが。
西国原さんは圧巻。もう言葉はありません。とにかく素晴らしいの一言。この公演でこの方は私の中で完全に女優になっています。しらけた演技でがっかりさせられるような役者さんには、この方の素晴らしい演技を見ていただきたいです。

本当に心温まる作品で、涙がほろり。

話の中で、宇宙人が乗り移った地球人をお互いに疑いあって探すというシーンがあります。

私なら簡単に見分けることができます。この作品を見せて、感極まらない地球人はいないはずです。